新築したときには最良だと思っていた間取りでも、「築年数が経つと、使いにくくなってきた」という話をよく聞きます。20年も経てば、0歳だった子供が20歳になるわけですから、ライフスタイルや家族構成に変化が生じるのは当然なのですが、築年数が経っても快適に暮らせる家の一例として、私がおすすめするのは「廊下のない家」。「廊下のない家」とはどんな家なのか、また、どんなメリットがあるのでしょうか。
廊下は両側を壁に囲まれ、通路として以外、ほかに利用しにくい空間。採光に乏しくて暗いことも |
廊下のない家は壁がない?
「廊下のない家」とはひとことでいえば、オープンな間取りの家です。壁によって部屋と部屋が区切られることで、通路としての廊下ができるわけですから、トイレや浴室のような特殊な場所を除いて、通路や玄関ホール、階段室などを部屋の一部として取り込んでしまえば、廊下はなくなるわけです。
空間と空間を区切るのには、壁ではなく間仕切りを使ってやんわり区切る、それによっていわゆる通路としてしか利用できない廊下をなくす。こういった考え方によってできた間取りが「廊下のない家」です。
廊下がないことのメリット1
では、「廊下がない家のメリット」は何でしょうか。
まず、必要に応じて空間を有効に活用できることがあげられます。例えば、こんなふうに玄関ホールとリビングを透過性のある間仕切りで区切るのもひとつの方法です |
例えば、右の写真のようなプランなら、間仕切りを開け放しておけば、通路や玄関ホールも部屋の一部になり、空間を広々と、有効に使うことができます。来訪者が親しい人なら、間仕切りを開けておいて、室内が多少見えたとしても気にならないかもしれません。また、家の中を見られたくない人が訪ねてきたときや、食事中などだけ、玄関ホールと室内の間仕切りを閉めるということで対処できるでしょう。最近は、テレビドアホンで玄関ドアを開ける前にだれが訪ねてきたかがわかりますから、臨機応変な対応も可能です
廊下がないことのメリット2
次に、壁で区切られていなければ、各空間の採光や通風などの条件がよくなります。
部屋として壁でしっかり囲まれてしまうと、窓をとれる面が限られてくるので、その部屋に十分な通風や採光を確保するのが難しくなることがあります。しかし、廊下などに面した側面の間仕切りを引き戸など、軽いものにしておけば、採光や通風に対しても融通性が高まります。
下の写真を見てください。これは子供室の例です。子供室そのものには南側に窓がありませんが、空間を仕切る間仕切り戸を開けておけば、南側の大きな開口から光がふんだんに入ります。また、このような透過性のある素材の間仕切り戸なら、閉めておいても、室内は明るいでしょうし、壁に比べて圧迫感も軽減されます。この手法は、特に子供が小さいときは、子供の様子がよくわかり、親子ともに安心できると思います。子供がある程度大きくなったら、間仕切り戸を室内が見えないタイプに交換したり、間仕切り戸にポスターや好きな紙などを張って、プライバシーが保てるようにしてもよいでしょう。
廊下がないことのメリット3
最後に、ライフスタイルなどが変わったときに対応しやすいことがあげられます。
将来、ライフスタイルなどが変わって間取りを変更したいと思ったとき、壁を壊す工事は大変ですが、間仕切りをはずすだけなら、簡単です。上の写真の子供室のように、引き戸のレールが飛び出さないようにしておけば、引き戸をはずしただけで、空間をつなげて活用することが可能です。
どうですか? 「廊下のない家」のメリットについて理解していただけたでしょうか。でも、この「廊下のない家」を実現するには、間取りのことだけを考えていては、ダメなのです。それについては、次ページで説明しましょう。