家を建てるには、あたりまえのことですが、土地が必要です。ですが、この「土地選び」、ナカナカ難しいもののようです。自由に考えられる住宅のプランニングひとつとっても、あれこれ迷って大変なのですが、現状あるものから選ばなければならない土地選びはなおさらです。資金面の制約があるのはもちろんですが、広さや形、向き、地盤など、なかなか自分の理想そのものという土地を見つけるのは、至難のワザ。では、長く快適に暮らせる家を建てるための土地は、どうやって見つければよいのでしょう?
長く快適に暮らせる家を手に入れるためには、土地選びは重要なのですが・・・ |
家を建てるなら南向き?
家や土地を評価する場合、人気があるのは「南向き」です。太陽光がサンサンと降り注ぐ南に向けて大きな開口部をとり、光と風をたくさん取り入れることができる「南向き」は、確かに、住宅のひとつの理想形かもしれません。この「南向き」は昔から高評価で、一戸建てにとどまらず、マンションなどでももてはやされています。
しかし、土地が広々ととれる郊外ならいざ知らず、都市部では、理想通りの「南向き」の家が建てられる土地に巡り合うことは難しいでしょう。仮に「南向き」の土地が見つかったとしても、住宅が密集していて、窓の数10センチ先は隣家などということにもなりかねません。無理に南面に開口や庭をとろうとして、ほかの部分のプランニングにしわ寄せがきてしまっては、長く快適に暮らせる家とはほど遠いものとなってしまいます。
さて、この「南向き」、本当に理想形なのでしょうか?
南向きは是か?
確かに、光をたくさん取り入れられることは、さまざまなメリットを生むでしょう。単に明るいだけでも、開放的な気分になりますし、照明などの光熱費も安く済みます。洗濯物を乾かしたり、布団を干すのにもメリットがありそうです。
反面、光の害が気になります。光がたくさん入るということは、それだけデメリットも多いと考えられます。たとえば、光が強いと、複層ガラスや断熱サッシを採用した高気密・高断熱住宅でない限り、室温の上昇は免れません。エアコンなどを過度に使用することで、電気代が上昇し、家計にも影響を与えます。長期間で考えると、フローリーングや壁紙、建具、家具、カーテンなどの退色もあげられるでしょう。これらは、リフォームの時期を早めるなど、予想外の出費を生む要因にもなります。さらに、光がたくさん入るということは、それだけ外から中をのぞかれる可能性があるということですから、プライバシーや防犯にも配慮しなければならなくなり、その対策には、やはり費用がかかります。また、エアコンの効率を上げるためや、プライバシー、防犯を考えるあまり、常時カーテンや窓を締め切っていては、何のための「南向き」かわからなくなります。
私が、この「南向き神話」に疑いをもったのは、ある建物を見たからでした。それについては次ページで…。