長期優良住宅/長く暮らせる家

1軒の努力では、家の資産価値は守れない?

家の資産価値の維持・向上に欠かせないものはメンテナンスやリフォーム、バランスのよいプランですが、それだけで資産価値は守れません。実は、資産価値の維持・向上にはもうひとつポイントがあったのです。

大塚 有美

執筆者:大塚 有美

長く暮らせる家づくりガイド

皆さんは、自分が建てた家の資産価値についてどういった考えをお持ちでしょう? 「 自分が元気に生きている間、生活できるだけもってくれれば充分」といった考えの方もいるでしょうし、「子や孫が住むところに困らなければいい」と思う人もいるでしょう。「現在、住んでいても将来売却するかもしれないので、資産として維持・向上につとめたい」と考える人もいると思います。

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メンテナンスやリフォームのほかに、家の資産価値の維持・向上に大切なのは、何だと思いますか?

このサイトでも、これまで家の資産価値の維持・向上に欠かせないこととして、中古でも下落しにくい"家の価値"自慢の風呂が家の価値を下げる?などの記事で、メンテナンスやリフォーム、バランスの良いプランを取り上げてきました。けれども、これは1軒の中で出来ること。当たり前ですが、日本の場合、実際の家の資産価値は土地と切り離して考えることはできません。

そしてこれは、単に高級住宅地ならば資産価値の維持・向上が安泰というわけではないのです。

湯布院温泉の努力

先日、ある本を読んでいたら、有名な温泉地・湯布院のある取り組みの話が出ていました。 その本によると、別府の陰に隠れて目立たない温泉だった湯布院は、早くから大型観光旅館や団体旅行が主流だった当時の歓楽型温泉ムーブメントに背を向け、個人や家族連れなどの小人数のお客をメインとした、静かな温泉地づくりを目指したそうです。

バブル崩壊後、全国の歓楽型温泉が勢いをなくしていく中、そんな湯布院の努力は実を結び、現在では観光客がたくさん訪れる有名な温泉になりました。歓楽型温泉が時世の中でその観光地としての資産を大幅に減らしていたのとは裏腹に、湯布院は自らの努力でその観光資産の価値を上げていったわけです。

そして湯布院がすごいのは、この現状に甘えず、さらに観光資産の価値を高めていく努力を行っている点です。湯布院は全国に先駆けて、建物の高さを規制する条例を施行しているのですが、現在では、電信柱を地中に埋め込む取り組みをしているのだそうです。観光がメインの産業である湯布院にとって景観を美しく保つことは、街の資産の維持・向上に欠かせないことと判断したわけです。

美観の象徴は電信柱!?

この話を読んで、街や土地の資産価値の維持・向上には、この「美観」が重要なポイントのひとつとなることを、改めて知らされた気がしました。湯布院は観光地なので特に「美観」に敏感だったかもしれませんが、これは住宅地でも同じことだと思うのです。

少し前に話題になった、東京・国立のマンションの高さ規制の問題などで「美観」は多いに注目されましたが、日本の住宅街は意外にもこの「美観」に無頓着です。マンションなどの大きな建物は問題視するけれど、湯布院のような地道な努力をして資産価値の維持・向上に務めようという住宅街は少ないのではないでしょうか? その象徴が、湯布院が取り組んでいる電信柱です。

例えば、東京の高級住宅地の電信柱は、意外にも野放しなのです。詳しくは次ページでご紹介しましょう。

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