高齢になったときに思わぬ落とし穴が……
家を建てたときにはそれほど気にならなかった階段の上り下りが、高齢になるとおっくうになったり、つらくなったりするものです |
子供たちが独立し、70代になったAさん。築25年の家で、夫婦二人だけの暮らしになりました。このころになって、とても不便に感じるようになったことがありました。それは階段。Aさんの家は、2階リビングのプランだったのです。
Aさんの家は、1階に玄関があり、リビングや寝室などは2階にあります。高齢になって、とても不便を感じるようになったのは、だれかが訪ねてきたとき。来訪者はドアホンで確認できるとはいえ、宅配便を受け取るとき、ちょっと近所の方が訪ねてきたとき、階段を下りて玄関まで行かなければなりません。キッチンや浴室などの水まわりもすべて2階にあるので、生活は2階で完結できるのですが、来訪者があると1階で対応しなければいけません。それと同時に、お米やペットボトル入り飲料など、重量のあるものを買って帰ってきたときも一苦労するそうです。
もっとも2階リビングだったおかげで、日当たりがよく、明るいリビングは快適だったわけなのですが、2階に玄関があれば、来訪者があるたびに、階段を下りる必要はなくなります。けれども、こういったことは家を建てた30代のときには想像もしていなかったことでした。Aさんの家は1階で生活できるようになっていないので、手すりにつかまりながら階段を上り下りして、これまで通り2階で生活しているそうです。
築25年の事例から学ぶ 子供室の考え方
Aさんの事例から、学べることがいくつかあります。ひとつめは、子供室の配置です。Aさんの家では北側に子供室がありました。考え方にもよりますが、それは正解だったと私は思います。ときどき、南側の条件のよいところに子供室を確保するケースを見かけますが、昼間の日差しが入る時間帯に子供は学校などに行っていて、子供室にはほとんどいません。
また、Aさんの事例のように、10年もすると、小学生の子供も成人しますから、ますます子供室にいる時間は少なくなっていきます。そして、いずれ、子供は巣立っていきますから、だれも使わない部屋になってしまうのです。子供が独立した後、残った家族が活用できるように、子供室を完全な個室にしないで、可動間仕切りで区切っておくとか、子供室と子供室の間の壁を取り払える構造にしておくなどの工夫をするとよいでしょう。
築25年の事例から学ぶ バリアフリー仕様
ふたつめは2階リビングのプランそのものについて。賛否あるとは思いますが、私は、都市で快適なリビングを確保するにはよい方法だと考えています。ただ、Aさんの事例を見ても明らかなように、高齢になったときのことを予測して対策をとれるようにしておくことは必要です。
まず、階段の上り下りのときに身体を支える手すりをつけておくか、後から手すりを設置できるように下地補強をしておくのは必須。そのほかに、新築のときに、外階段をつけ、玄関を2階に設けて、2階で生活できるようにするというのもひとつの方法です。また、あらかじめ1階に簡易な水まわりを配置しておき、いざとなったら1階での生活に切り替えられるようにしておくとか、ホームエレベーターを設置できるようにスペースを確保して、上り下りを少しでもラクにできるようにするといいかもしれません。
実際にどのようなプランにするかは、家族構成や敷地条件、生活スタイルなどを総合的に判断して、決断するしかありませんが、ひとつだけみんなに共通しているのは、頑丈で長持ちする長く暮らせる家がいいということ。30代で建てた家に、60代、70代になったときにも建て替えずにずっと住み続けられたら……。やはり、長く暮らせる家というのがよい住まいの前提条件だと思います。
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