実物を見るとわかること 多く見ると身に付くこと
浴室だけをとっても、住宅メーカーや商品によって細かい仕様は違っています |
総合住宅展示場や新築マンションのモデルルームを見学すると、どんなことがわかるのでしょうか。例えば、空間や部屋の広さを確認したり、部屋と部屋とのつながりを理解したり、インテリアコーディネートのアイデアを見つけたり、最新の設備機器の情報を知ることができます。
こういったことは、カタログや雑誌を見たり、各社のホームページでも、ある程度はわかるでしょう。でも、写真では、実感として把握しにくいこともたくさんあります。20畳のリビングの広さ、2.7mの天井高の空間ボリューム、吹抜けでつながる1階と2階の感覚、トップライトやハイサイドライトからの光の入り方などは、なかなか写真や文章ではわかりにくいことです。
また、数多く見て比べることで、今、こういった仕様が多いのだなといった標準仕様の目安がわかってきます。注文住宅の場合は、住宅メーカーによっても違いますが、その会社が扱う商品共通のシステムや、各商品ごとに標準仕様をラインナップしていますので、どの住宅メーカーや商品を選ぶかによって標準仕様の内容は違います。そして、その内容はカタログにまとめられているので、それを見ればだいたいわかります。けれども、建て売り住宅や分譲マンションの場合は、物件ごとにカタログなどがつくられていることもあり、今どきの標準仕様をつかむのはなかなか難しいものです。そこで、数多くモデルルームや物件を見学することで、標準仕様の目安をつかむことが必要になってくるのです。
バスルームだけでも広さや素材の種類・質感がさまざま
設備機器の中でも、システムバスを例にとって、グレードの違いと標準仕様を探してみましょう。まず、最初に見るポイントは、浴室の広さです。
高級グレードの分譲マンションのシステムバスは、1620サイズ(1坪弱)か、1822サイズ(1.1坪強)の広さのものを採用していることが多いと思います。それに対し、普及グレードの分譲マンションなら、もっと狭い1418サイズ(約0.75坪)を採用しているところが多く見られます。中級グレードなら、その中間が多いことになるのですが、システムバスは工業製品なので、マンション全体に採用しているサイズの比率で判断できます。1620サイズを採用している住戸が多いなら、高級グレード寄りのマンション。ほとんどの住戸に1418サイズが採用されている場合は、普及グレード寄りのマンションといった具合です。
こういったことが、システムバスだけでも、浴槽の素材、浴室の内装、水栓やドアの種類など、いろいろなポイントで判断できるのです。その一方で、現在のシステムバスの浴槽は、ほとんどのマンションで保温タイプの浴槽が採用されています。これは、恐らく高級グレードでも、普及グレードでも同じようなタイプのものになっているはず。つまり、物件価格による仕様ではなく、今どきの住宅なら当たり前の標準仕様なのです。
当然のことながら、システムバスだけでなく、キッチンやトイレ、セキュリティー、窓やドアなど、あらゆる部位で、同じようなことがいえます。
いざ、住宅を買うときにどの程度の仕様が標準なのかといったことは、マンションのモデルルームを1カ所見学しただけではわからないということが理解していただけたでしょうか。
たくさん見れば自分にとって必要なものが見えてくる
システムバスに限らず、モデルルームやショールームをたくさん見ることで、現在の住宅の傾向や標準的な仕様がわかってきます。そういった体験を重ねることで、この吹抜けをわが家に採用したら……とか、このシステムバスにしたら……といった、新しい暮らしのイメージを描くことができるでしょう。それにより、「自分たちはこういった暮らしをしたい」といった絵に近づくために、何が必要なのかがわかってくるはずなのです。
最新のものに目を奪われて、多機能なものや新しいものを選択していくのではなく、たとえ多くの人が採用しているものでも、自分たちの暮らしに不要なものは採用しないという、自分の基準で判断していくことが必要です。そのためには、まず、情報収集に励み、目を養い、自分の中に判断基準をつくる。この3つが大切ではないでしょうか。
なぜなら、家は「一生涯の中で一番大きな買い物」であり、長く暮らすものだからです。後で交換できる設備機器などはともかく、構造や性能に関わることは後からではそう変えることはできません。最初に自分の暮らしに必要な形を見極めるために、たくさん見ることが必要なのです。