修理に持ち込まれる家具は、2~3年しか使っていないというものもあれば、30年以上前に購入したという古いものもありますが、平均すると15年くらい前に購入したというものが多いようですね。家具の寿命についてですが、ダニエルの家具の場合は、必要な時期に適切な修理をしていただければ、お孫さんの代までは十分使っていただけると思いますよ。私の家にも祖父の時代につくった家具がありますから。
左が修理をしたダイニングチェア。右は修理前。木製の枠に破損があるときは補修して、組み直してから座面を張り替えるそうです |
見分けるポイントとして一番わかりやすいのは、ダボ構造か、ホゾ組み構造かということですね。生産工程を簡略化して大量生産された家具の多くは、ダボという木ねじで枠などを固定しています。ダボ構造で枠が連結されているものはグラつきやすく、抜けやすいのです。
それに対し、ホゾ組み構造はホゾと仕口部分の加工に時間がかかり、精度がよくないときちんとはまりません。ちょうど、昔の木造軸組の柱や梁と同じような構造ですね。耐久性があるのは何といってもホゾ組み構造になっている家具です。ホゾ組み構造なら、欠けや破損部分を補修して組み直すことができます。ダボ構造の家具は、一度グラつきが発生すると、そのままの部品を使って補修することが難しいので、修理が大掛かりになってしまうことがあるのです。
ダボ構造か、ホゾ組み構造かは、まず最初に売り場で販売担当者に確認してみましょう。販売担当者に知識があれば、質問の回答や説明に納得できるはずです。できれば、売りっぱなしではなく、販売後にも責任を持ってくれる会社から買うことをおすすめします。また、たくさんの家具を見て目が養われれば、椅子やテーブルなら、裏側や足元を見ると判断できる場合もありますよ。
Q.後々の修理を考えた家具ならではのつくりとはどんなものですか?
先ほどの話の中にもありましたが、ホゾ組み構造であることに加え、家具の骨組みとなる枠が木製のものは、耐久性があり、鋲を打てるので何度も補修をすることができます。
家具を購入するときは枠がしっかりしているものを選ぶこと。できれば複数の家具屋さんを回って、たくさんの家具を見て、目を養うことが大切です |
株式会社ダニエルの咲寿義輝さん、ありがとうございました。
お話を伺って、住宅と同様に、家具も愛着をもって長く使う人が増えるといいなあと思いました。そのためには、やはり、品質のよいものを求めること、購入後も修理などに対応してくれる会社のものを買うこと、普遍的なデザインのものを選ぶことが大切でしょう。
また、最近は家具の修理を行う業者は増えてきているとのこと。修理を受けてくれるところが増えるのはいいことなのですが、業者を選ぶときは注意が必要です。価格だけでなく、修理方法や補修材料などについても明確に説明してくれる業者を選ぶようにしましょう。もちろん、事前に見積もりを出してもらうこと。このあたりは、リフォーム業者を選ぶのに似ていますね。
そして、その家具を大切にできるかどうかは、やはり愛着をもっているかどうかに掛かっているようです。修理をすると新品同様にはなりますが、やはり新品ではありません。古さが味わいや風合いになりますが、深いキズなどが残ることもあります。両親から結婚祝いにもらった品だからとか、このキズはあのときにできたものだからといった、その家具にまつわる思い出やエピソードがあると、深い愛着が生まれ、古さやキズを受け入れることができ、長く使うことができるような気がします。このあたりは、住宅も家具も同じなのだと感じました。