人気の沿線は快適ではない!?
ここでもうひとつの資料を見てみましょう。国土交通省が平成21年4月に発表した公共交通の「快適性・安心性評価指標」です。同資料によると、前述の「住んでみたい沿線ランキング」1位の「東急東横線」の祐天寺→中目黒間のピーク時混雑率は172%、車内温度を自動で制御し除湿運転もすることができる高性能エアコンが設置されている車両の割合を示す車内快適指標は67.5%、第3位の「東急田園都市線」の池尻大橋→渋谷間の場合は、ピーク時混雑率は198%、車内快適指標は36.2%でした。通勤や通学だけを重視しなければならないのは、案外短い時間である可能性も。数年後には不便になっていたなんてことがあるかもしれません |
視点を変えて見てみよう
このように、一見快適に見えるブランド沿線ですが、人気の高さからかピーク時の混雑が激しかったり、最新の高性能エアコンが装備されていない車両が多かったりします。人気があるからと住んでみたのはいいけれど、これでは、毎日の通勤に疲れはててしまうなどということもあるかもしれません。視点を変えて、JR中央線にほぼ平行して走り新宿へ向かう2つの「沿線」、西武新宿線と京王線を同資料で見てみると、京王線の下高井戸→明大前間のピーク時混雑率は169%、車内快適指標は100%、西武新宿線の下落合→高田馬場間のピーク時混雑率は160%、車内快適指標は55.4%です。京王線はピーク時混雑率と車内快適指標の両方で、西武新宿線の場合はピーク時混雑率で、JR中央線より良い結果を示しています。
これはあくまで調査結果なので、実際は体験してみないとわかりませんが、混雑のピーク時に新宿まで行く場合は、JR中央線より京王線や西武新宿線の方が快適かもしれません。ちなみに、京王線や西武新宿線は「住んでみたい沿線ランキング」のベスト10に入っていません。
好きな沿線でも比較検討を
とはいえ、住宅は人生の中でも大きな買い物です。自分は人気の街や沿線に住みたいと強く思っているのなら、それを止める理由は何もありません。自分の夢を実現すれば良いのです。ただ、その場合でも、購入前に立地以外の要素を比較検討することが長く暮らせる家を手に入れるために大切なことだと思うのです。要は「通勤が大変だけれどこの街が好きだからここにしよう」と思って家を建てるか、「好きだからこの街を選んで家を建てたのに通勤に疲れてもう大変」となってしまうかの違いです。後者のようになってしまったら、長く暮らせる家にはなりません。自分が納得するためにも、さまざまなポイントを平行して比較検討することが必要なのです。
それはなにも「沿線」だけに留まりません。今回は首都圏の鉄道路線の話でしたが、地方の幹線道路でも、渋滞が激しいところとそうでもないところがあるなど、同様のことが言えるかもしれません。また、自治体によって異なる住民税や子供支援策なども、比較検討の候補に入るかもしれません。
そして、何より長く暮らせる家を建てるなら、敷地周辺の環境が重要です。できれば、近隣の人たちが美しい街並みを維持して、住まいの大切にしたいという考えが感じられる地域を探し当てたいものです。