土地活用のノウハウ/入居者ニーズとマーケティング

品質にこだわり、長持ちする賃貸住宅を建てるには

住宅を建てる際には様々な法令上の制限が関わってきます。建築基準法や、住宅の品質確保の促進等に関する法律とはどんなものかを知った上で、どんなポイントにこだわって建てるべきかをお伝えします。

谷崎 憲一

執筆者:谷崎 憲一

土地活用ガイド

建築基準法って何?

建築基準法では幅員4m以上の道路に2m以上敷地が接することが義務付けられている

建築基準法では幅員4m以上の道路に2m以上敷地が接することが義務付けられている

土地活用の一つの手法として、賃貸住宅を建設したいと考えた場合、守らなければならないいくつかの法令上の制限をご紹介いたしましょう。

例えば、アパートなどの建物を建築する上で遵守しなければならない法律の一つに、「建築基準法」があります。これは、用途地域とも密接に関係してくる法律で、建築物の安全性や居住性を一定レベル以上に保つことを目的とするとともに、健全な都市づくりに欠かせない建築物の秩序について示した、絶対遵守の法律です。

建物は人が使うために建設されます。地震大国である日本では、通常の地震で倒壊するような構造の建物は建てられないように定められております。
日本の風土は、地震にとどまらず、台風や大雨、洪水、雷等も多く、建築物への外部からの力から人命や財産を守るために様々な建物構造の基準を定めています。

また、古くから日本の家屋は木造が多く、人口も密集しており、火災が起こると甚大な被害に結びつきます。そのため、火災が起こりにくい、また万が一起こった場合でも消火・避難・救助活動が迅速に行えるような規制をしています。

具体的には、敷地と道路の関係を定めた建築基準法第19条では「道路と敷地の高さにおいて排水に支障が無いように高く設定する」とか、第42条及び第43条では「災害時に緊急車両が進入できるよう、4m以上の幅員の道路に2m以上敷地が接すること」など、細かく定められています。

また、建ぺい率や容積率、高さ制限、斜線制限といった、建物の大きさや高さの制限も建築基準法が基となっています。

この建築基準法は1948(昭和25)年に施行され、現在に至るまで何度か改正されています。1978(昭和53)年に起きた宮城県沖地震(マグニチュード7.4、震度5)による被害(死者28名、住宅の全半壊が6,757戸、部分壊81,365戸)を受け、耐震設計についての抜本的な見直しがされ、1981(昭和56)年に新耐震設計基準が定められました。

その後の1995(平成7)年の阪神・淡路大震災、2011(平成23)年の東日本大震災、2016(平成28)年の熊本地震においては、新耐震基準の建物であったかどうかが明暗を分けることになりました。

構造計算書偽造事件とコンプライアンス不況

以前起きた、1級建築士による構造計算書偽造事件では、建築基準法に定めた耐震基準を満たさないマンションやホテルが建設されており、マンションを購入された方に莫大な損害を及ぼし、社会問題にまで発展したことがありました。

この事件では、建築確認・検査を実施した行政および民間の指定確認検査機関が偽装を見抜けず、被害を拡大させてしまったということで、2007(平成19)年6月に耐震偽装を防ぐ策を講じた改正建築基準法が施行されました。

そのため細かい部分にまでチェックが行き届くようになりましたが、と同時に、建築確認の遅れが続出し、住宅着工数が激減するなどの大きな影響が出ました。その影響で建設業界・不動産業界では倒産が増加し、景気にも大きな影響がありました。

よい建物を作る基準の品確法

建物を建てる目的は、そこで人が生活や仕事をすることですから、一定の基準を満たした安全で安心できる品質が求められます。さらに、最近では、環境への配慮が行われるようになってきています。

住宅においても、簡易な建替え型から、経済的にも環境的にもやさしい長期ストック型の住宅、すなわち「良いものを造り、長く大切に住まえる家」という資産価値を高く維持できる良質な住宅が求められるようになってきています。これは、賃貸住宅であっても同様です。

安心して品質の保証された住宅を取得でき、建てる際にも質の高い住まいつくりを促進するために、2000(平成12)年に「住宅の品質確保の促進等に関する法律」(品確法)が施行されました。この法律は、「瑕疵担保責任」、「住宅性能表示」、「紛争処理機関の設置」の3つの柱で構成されています。それぞれ住宅の基本構造部において10年間の保証、耐震性や省エネなどの住宅の性能を数値評価、トラブルが発生した場合の紛争解決について定めています。

「瑕疵担保責任」については、業者に対し義務付けであるのに対し、「住宅性能表示」、「紛争処理機関の設置」については、任意制度で依頼者が希望した場合に限って適用されます。

耐震性能をあらわす耐震等級とは?

建築基準法では、耐震・耐風について次のように基準を定めています。

  1. 耐震(損傷防止):数十年に一回は起こりうる(すなわち、一般的な耐用年数の住宅では一度は遭遇する可能性が高い)大きさの力に対しては、大規模な工事が伴う修復を要するほどの著しい損傷が生じないこと。
  2. 耐震(倒壊防止):数百年に一回は起こりうる(すなわち、一般的な耐用年数の住宅では遭遇する可能性は低い)大きさの力に対しては、損傷は受けても、人命が損なわれるような壊れ方をしないこと。
  3. 耐風:極めて稀に(500年に一度程度)発生する暴風に対して倒壊や崩壊等せず、稀に(50年に一度程度)発生する暴風に対して損傷を生じないこと。

品確法では住宅性能表示制度を創設し、10分野にわたって住宅性能評価をするようにしました。その中でも、特に建物構造の安定に関する耐震・耐風に関する等級は、3段階で表示されています。

※等級が1から3まであり、数字が大きいほど耐震性や耐風性が高いことになります。

※等級が1から3まであり、数字が大きいほど耐震性や耐風性が高いことになります。


地震や災害に強いアパートや住宅を建設する際には、コストだけを追求するのではなく、長期的な視点に立って品質の高いものを見合った価格で選ぶのも、賢い選択方法の一つではないでしょうか。賃貸経営は長期的な事業ですので、品質面でも20年、30年を見据えるということが大切です。

自動車の買い替えと違って、一度建ててしまったものは、簡単に建て替えることはできません。生涯、もしくは次世代まで影響を及ぼします。ぜひ土地活用で建物を建てる際には、品質面をしっかりと検討するようにしましょう。

※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。

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