成功した人生、幸せだった人生
さまざまな人生模様 |
人生はドラマチックであれば、刺激的で楽しいのかもしれません。しかし平凡で、健康で、穏やかな人生もまた、良いものです。『成功した』と言われることと、『幸せだった』というのは似たような言葉であってもずいぶん違います。成功とは、周りが「この人は成功した」と思うことであって、幸せとは本人が感じることだと思います。ですから、周りから「幸せな人ね」と言われることは、またちょっとニュアンスが違ってきますね。やはり、成功して幸せになることが一番です。
お迎えは、必ずしも歳の順に来るとは限りません
家族の死……。長い闘病生活の末であったり、老衰であったり、不慮の事故であったり……。たとえ覚悟していた場合でも、しばらくは悲しみで呆然とされことでしょう。「もう涙も出ません。悲しすぎると、思考って止まるのですね。」
70歳半ばの女性オーナーさんが、本当に寂しそうに呟きました。彼女の一人息子が、癌で1週間前に亡くなられたのです。余命1年との告知を受けていたのですが、5か月ほどで亡くなられてしまいました。人には必ず「お迎え」がやってきます。しかし必ずしも歳の順に来るとは限らないのです。
女性オーナーは10年以上にわたり、相続税対策として、あの手この手を使って財産を少しずつ息子に移されていました。息子に内緒で息子名義の預金も積み立てていました。息子の遺産は、息子が自分で貯めた分も含めて、約8,000万円の現預金と、評価額約5,000万円の不動産でした。
良縁に恵まれず独身だったため、配偶者控除もなく、親が相続を受けて相続税を支払うという最悪の結果となりました。
女性オーナーは、息子に内緒だった預金について、「この口座は、私が勝手に預金したものなので、実際には贈与されていなかったということにして、課税対象からはずせないのでしょうか?」、と疑問を言葉にされました。
通常は、贈与された人がそのことを認識し、贈与された人が自由に使える状態でなければ、税務署は贈与とは認めてくれません。相続が発生した際に、贈与の非課税枠の対象からはずされてしまいます。
しかし税理士からは、「長期にわたって贈与を偽って息子に移転した資産を、いまさら『実は親のお金でした』と言っても、証明することが難しく認めてもらえません」と言われてしまいました。更に憔悴する姿は痛々しく、気の毒でした。
お迎えが、歳の順番に来るのなら計画的な納税を準備できるのですが、人の命は本当にわかりません。上記のように子供が先に、という例はまれだと思いますが、ご夫婦の場合では、相続税の見込みを計算するとき、万が一配偶者が本人よりも先に亡くなり、配偶者控除を使えない場合のことも、考慮しておくことをお勧めします。
国税庁の調査は厳格、ごまかしは利きません
国税庁所管の税務署は、「持たざる人」から税金を搾り取るよりも、「持てる人」からの方が徴収しやすいため、徹底的に調査される場合があります。彼らは、相続人すら気が付かないような財産の細部まで、なぜかきっちりと調べ上げてきます。ある几帳面なオーナーさんで、「相続税で修正申告を求められるのは恥だから、正直に完璧な申告をしたい」とおっしゃる素敵な方がおられました。充分に注意して申告されたのですが、やはり気が付かないミスや解釈上の違いによる申告漏れなどがあり、2箇所ほど修正を指摘されたそうです。
また、別のオーナーさんは、父が家族に言わずに内緒でしまい込んでいた大量の国債や金(きん)を申告後に指摘され、数千万円という多額の追徴を受けました。
国税庁の方々は舌を巻くほど優秀です。ちよっとした申告漏れやごまかしには慣れており、すべてにおいて先回りしていますので、正しく申告することが一番だと考えます。
ちなみに、厚生労働省の統計では、約110万人の方が1年間で亡くなっています。国税局の統計では、相続税の対象となる被相続人の数は、1年間で約4万5,000人です。つまり相続税を考えなくてはならない方は、100人中4人~5人となります。
相続発生の間際、おカネの動きの手元に
突然の相続の場合は仕方がありませんが、病気などで余命を覚悟されている場合は、必要であれば被相続人の預金口座から、ある程度下ろして備えておくことをお勧めします。病院への支払いや葬儀代など、いくつもの支払いが続くからです。相続発生の直前・直後のお金の動きは、税務署に説明を求められる場合があります。下ろしたお金の使途は記録を残しておき、申告する際に税理士にもわかるように備えておきましょう。
次は不動産については、事前に把握しておきましょうをご紹介します。