家をふたつ以上持っているなんて「うらやましい!」と思いますよね。「自分の家があるのに親の家を相続してしまった」「転勤しているうちに2箇所に家を持ってしまった」結果として2軒持つことになり、当のご本人たちは意外と淡々としています。
不動産はハイリスク・ハイリターンの資産ですが、家は収益を生みにくい資産です。ふたつの家をいつまで持っているか?という疑問がいずれ起こると思います。最後までふたつの家を持ち続けると決めているなら、別に手を打つことはありません。しかし、資産の置き換えが必要かもしれないなら、いくつかの注意をしてください。
●夫婦で共有する
どちらに住んでいるかはともかく、夫婦共同で所有することがお得になることがあります。二人の共有にしておくことで、3,000万円の特別控除も2倍使えるからです。ご主人の名義だけでしたら、3,000万円の特別控除しか使えませんが、少しでも奥様の持分が入っていれば、2倍の6,000万円の特別控除が使えます。持分に関する条件はありません。たとえ10分の1でも追加の3,000万円特別控除が使えます。
3,000万円以上の売却益が見込める場合には、贈与税のことを考慮した上で夫婦共有にすることをお勧めします。
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●住民票はどちらの家に?
住民票は売ろうとする方の家に移しておいてください。住民票の所在地にない家の売却には譲渡所得税の特例が使えません。住民票が移してあって、そこに何年住んでいたかということがポイントになります。
売ろうとする家に何年住んでいたか?その居住期間に関して、3,000万円控除や小規模宅地の評価減の特例の場合には、明記された最低限の期間というものがありません。たとえ、売却前に1日しか住んでいなくても、3,000万円の特別控除は使えます(理論的には)。もちろん、作為的な譲渡や虚偽の事実があれば、何年住んだことになっていようが特例は適用されません。
●所有期間5年超で税率は半分に!
譲渡所得税の税率のことを考えると、所有期間5年超がひとつの関門です。所有期間が5年を超えると長期譲渡となります。税率は長期譲渡で20%、短期譲渡で39%ですから、長期譲渡に該当すれば税金は約半分で済みます。ただし、この5年間というのも注意が必要です。「譲渡した年の1月1日において5年を経過していること」というのが、正確な規定ですのでご注意ください。特定の居住用資産の買い換えの特例には10年間の居住が条件です(厳密に言うと、譲渡した年の1月1日において所有期間が10年を超えていることと、居住期間が10年以上であること)。
●毎年払い続ける固定資産税もバカになりません。
固定資産税にも住宅向けの軽減特例があります。地方税法では、「小規模住宅用地」と呼んでいる住宅1戸につき200平米までの土地については、固定資産税評価額が6分の1になります。
固定資産税でいう「住宅用地」には、所有者本人が住んでいるかいないかは問われませんので、ふたつの家の両方の敷地でこの小規模住宅用地の軽減が使えます。固定資産税の納付書を必ずチェックしてください。
(ちなみに200平米を超える面積には3分の1の軽減です)
●相続対策では2軒を1軒に買い換える
両方とも売って、資産価値の高い1軒の家を持つほうが、相続対策上は有利になります。それは、相続税法に定める小規模宅地の評価減の特例の活用です。この特例の内容は複雑なので、正確な説明は後日いたしますが、今回は居住用の土地を80%減額される適用が一番有利なケースだという前提でガイドします。
被相続人が所有していて、相続人がその後所有あるいは居住している家の敷地に関して、相続税上の評価額を80%も減らすことができます。面積は240平米が上限です。上限規定は面積だけなので、地価の高い宅地ほど、軽減される金額は大きくなります。極端に言えば、田舎の山の中の240平米よりも、たとえば都心の240平米の方が節税効果は100倍以上は大きいでしょう。相続税を心配する人は、家の買い換えが効果的です。
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