一戸建てだからこそ存在意義の大きい展示場
最近は展示後に実際販売する「街かど展示場」も増えています(旭化成ホームズ「ヘーベルハウスかぜのとう」) |
総合住宅展示場は、大手ハウスメーカーや地域の有力ビルダーが主に注文戸建てのモデルハウスを共同出展しているところ。展示場を利用する最大のメリットは、完成された家が実際に見られること。収納扉を開けてみたり、床や壁などの建材に触れて確かめたり、ネットや平面図では分からない吹き抜けや天井の高さやスケール感を実感できます。また各社の実物商品が1箇所に集まっているので、企業間の比較が容易かつ効率的にできるのもメリット。各所に点在しているマンションのモデルルームと違い、購入検討者にとっては大変使い勝手の良い場です。
ちなみに、こうした常設の住宅展示場は世界でも日本にしかありません。欧米ではホームビルダーショーのようなイベント展示はあっても、「そこに行けば、1年を通していつでも最新の住宅が建っている」場所があるのは日本だけ。それだけ、住宅購入者にとっては情報が得やすいということでもありますが、「情報が得やすい」ということは、言い換えれば「選別しなくてはならない情報が多い」ということにも。展示場に行くタイミングを間違えたり下準備を怠ると、情報や営業マンに振り回されたりしてかえって混乱してしまいかねません。
展示場見学のよくある失敗例とは?
では、最近の住宅購入者は家づくりのどの段階で展示場を利用しているのでしょうか? 「住まいづくり研究所」アンケートによると、最も多い回答が「家づくりの時期がまだ決まっていない段階」。実はこれが家づくりを混乱させ疲れさせる要因にもなっているのではないでしょうか。「いつか家を建てたいとは思っているけれど、時期は未定。ちょっと気晴らしに行ってみようか」という段階で訪問すると、ステキな実物モデルハウスに魅せられて、あるいは営業マンの話でその気になって、資金の見通しもついていないのに「どうせ、いつかは買うのだから」と舞い上がって契約してしまったというケースも少なくありません。「家づくりの時期がまだ決まっていない段階」で住宅展示場に行く人が最も多い(出典:住まいづくり研究所) |
そうした「下準備を十分にせずに成り行きで契約」して実際に入居すると、「間取りや生活動線が家族のライフスタイルに合っていなかった」「(両親を介護したり子供が生まれたり)将来の家族構成の変化に対応していなかった」「少し背伸びして予算以上の物件でローンを組んだが、返済が思ったよりきつい」と後悔するケースも少なくありません。
さらに、展示場で見学する対象を絞り込んでおかないと、目移りして散々見て回った挙句「結局決められなかった……」という声もよく聞かれます。住宅展示場協議会の調査によると、現実には来場者の7割が1日3棟までの見学にとどまっており、4棟以上は26%しかいないことが分かっています。つまり時間的にも体力的にも集中力が続くのは1日3棟ぐらいが限界で、小さな子供づれの場合はなおさら多くは回れません。営業マンと話し込んでいれば1時間くらいすぐ過ぎてしまいますし、精神的にも疲れます。本来の家づくりに取り掛かる前から、展示場めぐりと営業マンとのやり取りで疲れきってしまうということになりかねないのです。
こうした失敗を防ぎ、展示場見学が徒労に終わらないための方法を、次ページでご紹介します。