アメリカは「物件」担保、日本は「人(返済能力)」担保
こうした古い様式で築年数が古いほどプレミア価値がついて高く売れるアメリカの住宅市場は、日本から見ると羨ましい限りだが… |
米サブプライムローンが本人審査を必要としないと前述しましたが、アメリカの住宅ローンは基本的に抵当金融。物件そのものの資産価値、つまり住宅のデザインや性能を抵当に融資が実行されます。一方、日本の住宅ローンはクレジットローン。ローンを借りる「人」の収入や勤務年数、信用性を審査して融資されます。
これまで、日本の中古住宅が流通しないのは、この「人」基準のローンのせいだという議論がありました。アメリカのように「物件」基準であれば、質の高い住宅が流通し、リフォームで手を入れれば抵当価値も上がるので、リフォーム需要も活性化する。日本の住宅が20年で建物価値がゼロになり、リフォーム景気も盛り上がらないのは、「物件」基準の住宅ローンにしないからだ、というものです。
しかし、今回のサブプライム問題のように、「物件」基準のローンで本人審査が不要となると、本人の返済能力は低くても「いい住宅」なら多額のローンが借りられてしまいます。住宅価格が上昇しているうちは転売や低金利ローンへの借り換えで何とかしのげますが、市場が冷え込んで金利が上昇してしまうと一転、将棋倒しのようにローンが焦げ付いてしまうわけです。
こう考えると、日本の厳しすぎるほどの(最近はそう厳しくもなくなっていますが)本人の返済能力を審査するローンも、経済安定のためにはよかったのではという気もしますが、逆に日本の場合は本人の返済能力が担保ですから、家を差し押さえられても債務と連帯保証がついてまわります。こうした悲劇をなくそうと、日本でも債務責任を問わないノンリコースローンの導入が叫ばれていた矢先でした。
サブプライム問題は日本にとって「対岸の火事」?
世界経済を率いるアメリカのローン市場危機は日本にもおおいに関係がある?! |
もう一つの不安要素は、今回のアメリカの流れが日本の今と一部重なっているように見えることです。サンフランシスコやワシントンなど一部で住宅価格が2~3倍にもなる急騰は、供給不足(売り渋り)と「売り渋りで住宅価格がさらに上昇するのでは」と買い急いだ消費者心理で煽られました。一般的に住宅価格と所得は連動して動くと言われていますが、アメリカでは住宅価格が1996~2003年の間に47%も上昇したのに対し所得は22%しかあがらず、住宅価格の上昇率が所得のそれを上回ってしまったことも返済不能続出に拍車をかけたといわれています。個人可処分所得に対する家計債務の比率も、1990年は87%だったのが2005年には124%にも膨れました。
ひるがえって日本。GDPが予想を下回り、格差社会が進行して賃金も伸び悩んでいる中で、地価やマンション価格の上昇に所得の伸びが連動しているといは決していえません。
日本の住宅ローンも「ご利用は計画的に」
今回問題となった米サブプライムローンでは、最初の2年間だけ4%前後と低く、3年目以降は10%以上に跳ね上がるものもありました。日本からみると4%台でも高金利のように見えますが、経済学的に平均的金利が6~8%で推移しなければ経済が安定しないということからみれば、アメリカのサブプライムローンの金利も決して異常な金利水準ではないということがいえるのではないでしょうか。アメリカ人も日本人も、それこそ異常なほど続いた低金利時代でローン金利感覚が麻痺してしまっていることのほうが危険なのでは……。そんな教訓を今回の問題は教えているように思います。
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