終わりの見えない構造計算書偽装事件。はやく再発防止策が施行されることが望まれています(写真はイメージ)。 |
今回は、まずは構造設計にまつわるなぜ?に触れ、そのあとに国交省がまとめた再発防止策の中から特に3つを取り上げその内容についてみていきたいと思います。
【構造計算のなぜ】
・構造計算ってなに?
・担当者によって計算結果が違うのは本当?
・国土交通省認定プログラムってなに?
【再発防止3つの方法】
・ピアチェックの義務化
・新築マンション、戸建住宅の欠陥に備えた保険加入などの義務化
・建物の完成前に自治体などの「中間検査」を義務化 →次のページ
構造計算のなぜ その1:構造計算ってなに?
大きな建物の設計では、意匠・構造・設備の3分野の専門家が関わっている |
その中の構造設計で何をするかというと、その建物が、建物にかかるさまざまな荷重や加わる力(地震・風・雪)に耐え、安全に建っていられるかを確かめるために、柱や梁、耐力壁などの位置や寸法、鉄筋の量などを計算して決め、図面化する作業を行います。この、計算によって安全性を確かめる作業を構造計算といいます。
構造計算は、多くが国土交通省が認定した構造計算プログラムを使います。耐震偽装事件では、この計算プログラムを不正に使用して、入力値と結果に別のプログラムのものを合わせたり、数字を差し替えて帳尻をあわせたりといった方法で行われたようです。
構造計算書のなぜ その2:担当者によって計算結果が違う?
数式計算の答えといえば、ひとつだと思いませんか?ところが構造計算では、担当者によって結果が違うことがままあります。それはなぜかというと、まず使用する計算プログラムによっても答えが違ってくることと、例え同じプログラムを使っていたとしても、プログラムに入力する際に行われるモデル化という作業が個々の設計者によって異なってくるため、結果も異なってくるというものです。国土交通省認定の計算プログラムは、たくさんの種類が市場にでています。再計算するときは同じプログラムを使うことが条件となりますが、それでも結果が違ってくることはありうることのようです。構造計算のなぜ その3:大臣認定構造計算プログラムってなに?
構造計算用のソフトは民間会社からいろいろな種類が出ていています。大臣認定を受けたプログラムは106種類、市販されているものは56種類に及ぶとか。構造計算書は大規模な物件になるとA4用紙で数百ページに及ぶような膨大な書類ですが、この大臣認定プログラムを使って構造計算した場合、確認申請書に添える図書から構造計算プログラムの計算過程の部分を省略することができます。各自治体の確認審査部門および民間の指定確認検査機関の殆どでこの大臣認定構造計算プログラムを持っていなかったことが判明しました。構造計算書の偽造を防ぐために、確認審査機関で構造を再計算する案もあったようですが、実際問題として認定プログラムの種類が多いこと、同じプログラムを使って再計算をしないとあまり意味がないこと、個々のプログラムの値段が高い(例:ある計算プログラムで130万円(税抜き))ことも影響し、現実的にこの案は難しいのではないかと思われます。
以上、構造計算にまつわる「なぜ?」を3つ取り上げました。
それでは次のページで、国土交通省が発表した再発防止策について見てまいりましょう。