日本の家づくりは
日本の家づくりの大きな特徴に、外部と内部の境界空間へのこだわりがあります。では、どうしてこのような不思議な「境界空間」ができたのでしょうか?それには構造的な問題が関係しています。ヨーロッパの組積造の建物は、厚い壁で構造としての役割を担っています。そのためあまり大きな窓を設けることができません。しかし日本の木造建築の場合は、柱と梁で全体の重さを支えるので、内外を隔てる壁を容易に外すことができるのです。そこで内と外の空間を仕切る間の戸、つまり間戸(マド)が生まれたのです。
ヨーロッパの窓は採光・通風のために壁にあけた開口部をいいます。したがって日本の間戸とヨーロッパの窓では考え方が違うのです。
日本の間戸には内と外を緩やかにつなぐ縁側、濡れ縁があります。これらは自然との共生を大切に考えてきた日本人の独創的な空間といえます。こういった境界空間は屋内でも見られます。それが障子や襖です。障子や襖は空間をダイナミックに演出することができます。また、通風やバリアフリー等に重宝します。
現代の住宅はドアタイプが主流になっていますが、用途に応じて引戸を使い分けることで、空間の自由度を高めることができます。また現代の住宅では、「窓」という機能重視の開口部をつくりたがりますが、「間戸」という発想も持ち合わせたいものです。蒸し暑さに対処するならば風通しの良い開放空間、冬の寒さを凌ぐには閉鎖的な空間の方が求められます。このように開放と閉鎖の両極端な考え方が四季の変化で衝突します。これらを解決するにも「窓」と「間戸」両方の考え方が必要なのです。