田舎暮らし/田舎暮らし・スローライフ情報

オトナの楽問/LPレコード

快適な定年後の暮らしへソフトランディングするためには事前の準備が肝心。好奇心をチクチク刺激する「オトナの楽問/LPレコード」にチャレンジしよう。

堀江 康敬

執筆者:堀江 康敬

田舎暮らしガイド

ひたすら会社人間として働いてきた後にやってくる第二の人生。いきなり田舎暮らしを目指しても、文字通り荒野に放り出されるようなもの。快適な定年後の暮らしへソフトランディングするためには事前の準備が肝心です。何が次の人生を豊かにするのか、じっくりと田舎でのライフスタイルを吟味しておきたいものです。

人生80年(として)。60歳でリタイアすれば20年(時間にして175,200時間!)もの時間を手に入れることになります。これを使わない手はない。自給自足はサバイバル過ぎるし、晴耕雨読は枯れすぎている。しかし、まだまだ世の中への好奇心は色あせていないはず。これからは「よく遊びながら、よく学べ」でいってみよう。

↓オトナの楽問シリーズ バックナンバー↓
オトナの楽問/湯治
オトナの楽問/懐かし工作
オトナの楽問/鍋料理
オトナの楽問/仲間づくり
オトナの楽問/続・落語
オトナの楽問/落語
オトナの楽問/本格焼酎
オトナの楽問/映画鑑賞
オトナの楽問/茶の湯
オトナの楽問/昆虫採集・観察
オトナの楽問/夫婦旅
オトナの楽問/探偵小説
オトナの楽問/俳句

肩肘張ったお勉強は、旺盛な知的好奇心を満足させてくれません。楽しいから学ぶ、どうせ学ぶなら楽しくなければならない。「学問」は若いモンに励んでもらい、オトナは田舎で「楽問」を遊ぶのだ!

さて、今日はハートウォーミングな「LPレコード」について学ぼうか!

禁欲的ジャズ喫茶の楽しみ

ガイドの私が20代後半頃、渋谷の百軒店(道玄坂の裏筋)は、ジャズ喫茶が軒を並べた個性的な一角でした。確か、現在の「渋谷109」界隈は「恋文横町」とも呼ばれていたことを憶えています。

「オスカー」「ありんこ」「スイング」「ブルーノート」「DIG渋谷店」等々。そして数軒の映画館も。「太陽がいっぱい」「男と女」「さらば友よ」といったヨーロッパ映画に耽溺した後、その足でジャズ喫茶にもぐり込んだものです。

その頃のジャズ喫茶は、犯すべからざるリスニング・マナーがありました。

・いかに珈琲が不味くても騒ぎ立ててはいけない。JAZZ以外は無関心といった風情を保つべし。
・副流煙(ふくりゅうえん)に目くじらを立ててはいけない。嫌煙家は歌声喫茶に行くべし。
・地震・雷・火事・ゴジラ来襲でもない限り、大声で喋ってはいけない。
・2時間以上ねばってはいけない。延長する場合は新たな注文をすべし。

といったものだったんですが。何とまぁ、我がままな客商売。しかし、当時のジャズ喫茶は魅力にあふれていました。まず、店内に入るとJBLパラゴンの低音ホーンが全身を包んでくれる。店のマスターが目線で座れるテーブルを教えてくれる(これって、ジャズ喫茶のオヤジと親しいってこと。ジャズファンの夢だったんですねぇ)。店のリクエストノートに聴きたいLPレコード名を書き込む。珈琲をブラックで注文。

香り高きピー缶(紺色の缶に入った両切りショートピース)を取り出し、最初の一本を燻らす。雑誌「スイング・ジャーナル」で植草甚一の記事を読んだり、足先でフォー・ビートを刻みながらの数10分……。

カウンターのLPレコードのジャケットが取り替えられる。私のリクエスト曲!「おっ、この曲をリクエストした奴は?」と、やられたとばかりに他の客たちが辺りを見回す。ちょっとした優越感。とまぁ、今思えば青臭く、くすぐったい想い出でもあります。

郷愁のLPレコードジャケット

それから数十年。往年のジャズレーベルも続々とCD化されています。扱いやすい、音の劣化が少ない、聞きたい部分を簡単に取り出せるといった魅力がありますね。

一方のLPレコードは、レコード盤が傷つきやすいし、針が劣化したら交換しなきゃいけないし、おまけにA面を聞き終わったらB面にひっくり返さなきゃいけない。エッジの効いた音はCD、暖かみはLPとか言われていますが、まぁ音の好みは十人十色。しかし、私にはどうにもCDのあのコンパクトさが物足りない。30センチ角のLPジャケットに郷愁を感じてしまうんです。

ジャズのLPレコードの魅力は、音盤のみならずプラスそのジャケットデザインにあると。

黒地にゴチック体のシンプルなタイポグラフィの「サムシン・エルス(Cannonball Adderley)、鮮やかなブルーバックとモヒカン刈りのシルエットのコントラスト「サキソフォン・コロッサス(Sonny Rollins)」、女性のタイトなスカートとハイヒールを大胆にトリミングした「クール・ストラッティン(Sonny Clark)」、そして荒れたビルの壁面に手描き風のレタリングの「グルーヴィー(Red Garland)」……。う~む、切りがない。

次は、田舎の我が家をジャズ喫茶にする。
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