ひたすら会社人間として働いてきた後にやってくる第二の人生。いきなり田舎暮らしを目指しても、文字通り荒野に放り出されるようなもの。快適な定年後の暮らしへソフトランディングするためには事前の準備が肝心です。何が次の人生を豊かにするのか、じっくりと田舎でのライフスタイルを吟味しておきたいものです。

人生80年(として)。60歳でリタイアすれば20年(時間にして175,200時間!)もの時間を手に入れることになります。これを使わない手はない。自給自足はサバイバル過ぎるし、晴耕雨読は枯れすぎている。しかし、まだまだ世の中への好奇心は色あせていないはず。これからは「よく遊びながら、よく学べ」でいってみよう。

肩肘張ったお勉強は、旺盛な知的好奇心を満足させてくれません。楽しいから学ぶ、どうせ学ぶなら楽しくなければならない。「学問」は若いモンに励んでもらい、オトナは田舎で「楽問」を遊ぶのだ!

さて、今日は「俳句」を学ぼうか!

田舎暮らしは季語だらけ

俳句は季節感の文学ともいわれ、春夏秋冬の季節を表す季語・季題を必ず盛込むというルールがあります。
夏を例にとると、生き物では青がえる、かたつむり、初鰹、ほととぎす、みみず、めだかなど。植物では紫陽花、いちご、菖蒲、たけのこ、なす、ひまわり、牡丹など。気象・天文では秋近し、暑さ、風かおる、雲の峰、五月雨、日盛り、夕立、夕なぎなど。

行事や生活の季語もあります。青田、うちわ、川開き、帰省、行水、金魚売り、草取り、花火、日傘、昼寝、風鈴、虫干し、浴衣……。まさに季語は田舎暮らしの森羅万象に及んでいますね。俳人デビューの舞台としては事欠きません。(季語は旧暦をもとに分類されており、今の感覚では捉えにくいものもありご注意を)

とりあえず俳号をつけてみる

風かおる田舎暮らしの縁側、見上げれば雲の峰(入道雲)が。よしここで一句!
早まってはいけません。楽問とは遊び心を持って学ぶこと。十七文字をひねり出す前に、自分の俳号を持つことをお勧めします。俳句の世界で使うハンドルネーム。これさえあれば一気に俳人気分を味わうことができます。

本人の好きなように名乗るのはかまいませんが、冗談でも「天才バカボンのパパ」とか「オバタリアン」といった類は避けるのが賢明です。ビギナーズラックで素晴らしい一句ができたとき、そこに「天才バカボンのパパ」と記されている。これは切ない。まぁ「あしたのジョー」程度なら同世代の共感を呼ぶかもしれませんが。

まず、自分の名前を音読みしてみます。私の場合、康敬(やすたか)ですから、「こうけい」と読ませる。別の漢字を当ててみると「光慶」「候鶏」「恋螢」と、なにやら雅びなような深い意味があるような俳号ができあがります。この実態(あなた自身)をぼかしながら作者をつかまえさせないところがポイントですね。

自分の出身地や移住先の自然や、生まれた季節の季語をいただく。草木がいっせいに芽吹きはじめる喜びの春の季語を「山笑う」といいますが、「山笑亭」「山笑女」にしたりすると、一気に俳号めいてきます。

俳句の「俳」の字には滑稽、おかしみといった意味があります。つまりユーモアですね。それもどこか斜めに構えたユーモア。

もっと遊びたかったら、青春時代に好きだったミュージシャンでも。「出嵐(ディラン)」「転石(ローリング・ストーンズ)」、ご夫婦向けには「妻文(サイモン)」と「我半狂(ガーファンクル)」など。自分の趣味趣向から選ぶなら「馬凡(バーボン)」や「升宙(焼酎)」なども如何かな?くれぐれも、暴走族グループ風やタカラヅカ風にならないようにご注意を。

ちなみに私の俳号は「一睡庵」。田舎に移住して、最初に意気投合した陶芸家が命名してくれました。一睡はうたた寝、少しの間のひと眠り。庵は茅葺きの小屋、僧侶・世捨て人や風流人などの住む質素な小屋の意味。まだまだ俗人ながら、田舎暮らしのゆったりとした時間の流れを感じられて気に入っています。

先人の俳号を参考にする

俳句を始めるなら芭蕉や山頭火を目指したい!こんなやる気の真面目な人には著名な俳号をご参考に。

◆「夏草や兵どもが夢の跡」松尾芭蕉/移り住んだ深川の草庵に門人から芭蕉の株を贈られたことから。
◆「わけいってもわけいっても青い山」種田山頭火/たまたま見いだしたその文字の音と義が気に入ったので。
◆「遠山に日の当たりたる枯野かな」高浜虚子/彼の本名は清(きよし)で、これをもじって虚子とした。
◆「降る雪や明治は遠くなりにけり」中村草田男/腐った男が俳号の由来。
◆「恋知らぬ猫のふり也球あそび」正岡子規/若い時結核で喀血。啼いて血を吐くホトトギス(漢字で子規)という表現があることから。

次はいよいよ五七五の実践です。