建売住宅や分譲マンションなどの新築住宅であれば、そのほとんどは売主が宅地建物取引業者です。その一方で、中古住宅の売主は個人のケースが多くを占めるものの、業者のことも少なくありません。このとき業者と個人ではどのような違いがあるのでしょうか?
中古住宅の売買で「買主が個人」であることを前提に、その違いをみていくことにしましょう。なお、売主が宅地建物取引業者でない法人の場合は、消費税などを除き原則として個人と同様に扱われます。
手付金などの額の違い
宅地建物取引業者が売主の場合、売買金額(消費税抜きの本体価格)の10%を超える手付金、または1,000万円を超える手付金には保全措置が必要です。つまり、中古住宅の場合でも保全措置をしないで業者が受け取ることのできる手付金は売買金額の10%以下かつ1,000万円以下の金額までです。ちなみに新築未完成物件の場合は、これが5%以下かつ1,000万円までとなっています 。
これは中間金についても同じであり、手付金と中間金を合わせた金額が売買代金の10%または1,000万円を超える場合には、保全措置を講じなければなりません。
また、仮に保全措置を講じたとしても、宅地建物取引業者が手付金として受け取ることのできる金額は、売買金額の20%までに制限されています。
一方、個人が売主の場合には、この手付金などに関して何ら制限はありません。ただし、あまりに高額な手付金または極端に低額な手付金は、別の意味で問題があるでしょう。
瑕疵担保責任の違い
引き渡し後に発見された隠れたる瑕疵(欠陥)について、売主の責任を定めた「瑕疵担保責任」ですが、宅地建物取引業者が売主の場合は、最低でも引き渡し後2年間はこの責任を負うことが義務付けられています。それに対して、個人が売主の場合は「瑕疵担保責任を負わない」とする特約も有効とされ、ある程度の築年数を経た建物の場合には、この免責特約を付けることが実際に多くみられます。
通常の中古住宅でも、個人が売主の場合は引き渡しから3か月程度の瑕疵担保責任期間に限定することが多いでしょう。
登記手続きの違い
基本的にどちらでも変わりはないのですが、個人が売主の場合にはその売主が借りた住宅ローンに関する抵当権の抹消手続きを伴うことが多くなります。一つの金融機関での手続きが15分~30分程度で終わることもあれば、2時間くらいかかるような例もあるでしょう。決済では買主も同席してずっと待つことが多いため、それがいくつもあると大変です。
宅地建物取引業者が売主なら、このような煩わしい手続きをせずに済むことが大半です。
クーリング・オフの適用
不動産購入における「クーリング・オフ制度」は、一定の要件のもとで宅地建物取引業者が売主の場合のみ適用されます。個人が売主の場合は、いかなる状況下の契約であってもクーリング・オフの適用はありません。個人が売主のときに契約手続き上の問題があれば、別の法律や規定によって、仲介業者などの責任を求めていくことになります。
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