【ガイドの不動産売買基礎講座 No.94】

「物件価格の2割の頭金を用意しよう」
「頭金ゼロでも購入可能」
「頭金10万円で契約できます」 etc.

住宅を購入する際の資金計画の解説あるいは不動産広告など、さまざまな場面で「頭金」という言葉が使われています。一般の人も「頭金が足りない」とか「頭金を貯めなくちゃ」とか、あまり違和感のないまま「頭金」という言葉を使うことが多いようです。

ところで、この「頭金」とはいったい何なのか、あるいは法的にどのような意味合いがあるのかをご存知でしょうか。そこで今回はいつもと趣向を変え、「頭金」という “用語” について考えてみることにしましょう。


頭金に相当するものは何?

不動産取引のなかで「頭金」といえば、一般的には物件価格から住宅ローン借入れ額を差し引いたものと解釈されます。自己資金のうち「売買代金に充当する額」と考えることもできます。

次のような例で考えてみましょう。
a.売買代金(物件価格)    3,000万円
b.手付金(契約時支払い)    300万円
c.残代金(決済時支払い)   2,700万円
d.残代金のうちローン借入れ額 2,400万円
e.残代金のうち自己資金分    300万円
f.売買代金以外の諸費用     200万円

この場合に「頭金」とは「手付金+残代金のうち自己資金分」(b+e)の600万円であり、「売買代金-残代金のうちローン借入れ額」(a-d)としても同じことです。

それに対して、「頭金+売買代金以外の諸費用(b+e+f=800万円)」のことを「自己資金」といいます。諸費用分もあわせてローンを借りる場合は少し違いますが……。

さらに、自己資金と手元に残す金銭を合わせた総額を「手持ち資金」という場合もありますが、このあたりの解釈や用語の使い方は人によってまちまちかもしれません。


「頭金」よりも大事なのは「自己資金」

一般消費者向けに書かれた不動産関連の書籍や他のwebサイトなどをみていると、ある一つの傾向が浮かび上がってきます。

それは、不動産媒介実務に携わる人は「頭金」という言葉をあまり使わず、そうでない人が書いた書籍やwebサイトなどでは「頭金」が多く使われているということです。

もちろん、不動産実務に携わる人が「頭金」という言葉をまったく使わないわけではなく、新築住宅の販売業務をメインに取り扱う不動産業者では「頭金」を使う機会が比較的多いかもしれません。とくに物件広告などでは「頭金」が使われることも多いでしょう。

それでも、不動産媒介実務に携わる人たちが「頭金」という言葉をあまり使わないのは、「売買代金」「手付金」「残代金」といった用語がいずれも大きな意味(契約上の関連性)を持つのに対して、「頭金」には何ら法的な意味合いのないことが一つの要因です。

重要なのは「諸費用まで含んだ自己資金」と「住宅ローンの借入れ額」であって、いわば「住宅ローンの借入れ額」の反義語に過ぎない「頭金」の「用語としての重要性が実務上では低い」のだといえるでしょう。

ただし、金融機関などでは「頭金」と「借入れ額」が重要なのかもしれません。

ちなみに、実務者向けの収録語数の多い不動産用語集などをみても「頭金」という用語はあまり掲載されていません。そもそも「頭金」は不動産取引用語ではないのです。

誤解を受けるといけませんが、「頭金」という言葉を使うこと自体が悪いのではなく、共通の認識のもとで使われていればさほど問題はありません。

しかし、「頭金は○割必要」という記述はよいとしても、書籍やwebサイトなどでときどき「契約時に頭金を支払います」といった記述がされているのをみると首を傾げてしまいます。

たしかに「手付金」を差し引いた「残代金」のすべてを住宅ローンで借りるなら、「手付金」と「頭金」が同額になり、「契約時に頭金を支払う」という記述も間違いではありません。

ところが、前記例のように「残代金」のなかに「頭金」の一部が含まれるケースでは、契約時に支払う「手付金」と「頭金」がまったく違う金額になるわけです。

また、契約時に支払うのはあくまでも「手付金」であり、実際の不動産売買契約では「頭金」が2割、3割、あるいはそれ以上あったとしても、「手付金」としては売買金額の1割程度に留めるケースが多くなります。

そのため、「頭金を2割以上用意しましょう」という解説の流れのなかで「契約時に頭金を支払います」とあれば、明らかに執筆者の認識不足、誤解といわざるを得ないでしょう。

ただし、これにもなかなか難しい問題があり、不動産以外の金融商品などの売買においては「頭金=手付金」という認識のほうが一般的なケースもあるようです。

試しに国語辞典で調べてみると、「頭金」の意味として「契約成立と同時に代金の一部として支払う金銭」「手付金、保証金」といった記述があり、不動産売買における一般的な認識には当てはまらないようです。

そもそも、不動産売買における「手付金」は契約時点において “代金の一部” として扱われない(残代金支払い時に売買代金へ充当される)性質のものであり、「頭金」の意味とされる「代金の一部として支払う金銭」には該当しません。

いずれにしても誤解を招きやすい「頭金」という言葉ですから、それを読む側のユーザーとしては「頭金」に法的な意味合いがないことや、明確な定義がないことを理解したうえで、前後の文脈に注意して慎重に読み解くことが求められます。


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