住環境を重視して住宅を選ぶのなら、一般的には「第一種低層住居専用地域」で考えたいところですが、他の用途地域でも環境の優れた住宅地があるようです。
(千葉県 近藤さん 30代 女性)
用途地域の種類にかかわらず、街なみや環境の整備が行なわれる例が多くなってきた
□ 第二種低層住居専用地域
□ 第一種中高層住居専用地域
□ 第二種中高層住居専用地域
□ 第一種住居地域
□ 第二種住居地域
□ 準住居地域
□ 近隣商業地域
□ 商業地域
□ 準工業地域
□ 工業地域
□ 工業専用地域
これらの用途地域のなかで、一戸建て住宅やマンションなどを建てることができないのは工業専用地域だけであり、他の用途地域であれば基本的にどこでも住宅を建てることが可能です。
また、一般的に住環境は第一種低層住居専用地域が最も優れていて、住環境を重視するのなら住居系用途地域、利便性を重視するのなら商業系用途地域とされています。準工業地域と工業地域では、住環境も利便性も劣るものだと考えるのが普通でしょう。
ところが、以前から都市部の市街地には準工業地域に指定されたエリアにひろがる住宅地も少なからずあったほか、近年は企業のリストラなどに伴い、準工業地域ばかりでなく工業地域に立地する工場の跡地が、住宅地として開発されるケースも多くなってきました。
このような敷地ではもともとの規模が大きく、マンションでも一戸建て住宅でも、ランドスケープデザインを重視した大掛かりな街づくりが行なわれることもあります。また、小~中規模の開発であっても、最近では環境面に配慮した住宅デザインが多くなっているでしょう。
そのため、街なみの整備などが進んでいない第一種低層住居専用地域の住宅地よりも、近年に開発された準工業地域や工業地域の住宅地のほうが住環境に優れているというケースもみられるようになってきています。
住環境重視で物件探しをしている場合でも、十分に検討対象となり得る工業系用途地域内の物件もありますが、通常よりも慎重な下調べが必要となることもあるので注意が必要です。
まず、いくら現在の住環境が優れているといっても、用途地域の指定はあくまでも工業系であるということを忘れてはいけません。
周辺エリアに工場などがまったくない状況であれば、近い将来に用途地域の指定そのものが見直される可能性もないわけではありませんが、現時点で工業系用途地域の指定がされているのにはそれなりの理由があるはずです。
用途地域が変わらないかぎり、隣家が建て替えられて工場になる可能性も常にあり、近隣にまとまった空地などがあれば、なおさら注意をしなくてはいけません。
周囲がほとんど住宅地になっているとしても、用途地域の規定に適合する工場などであるかぎり役所は建築を許可することになっています。
建て替えをするときの建物用途などについて、住民同士での申し合わせや規定などがあるのかどうか、あるいはその取り決めにどの程度の拘束力があるのかなど、事前にしっかりと確認しておくようにしましょう。
ちなみに準工業地域では、
□ 危険性や環境を悪化させるおそれがやや多い工場
□ 危険物の貯蔵、処理の量がやや多い施設
さらに工業地域では、
□ 著しく環境を悪化させるおそれがある工場
□ 危険物の貯蔵、処理の量が多い施設
などを「建てても良い」ことになっています。もちろん、それぞれ事故などが起きないように必要な対策が講じられるハズですが……。
また、準工業地域なら定められる日影規制も、工業地域では(商業地域の場合と同様に)適用されず、隣接地に別の建物が建築される際にも日照の問題はさほど制限を受けないということも覚えておきましょう。
工場周辺の環境は必ず操業時間中に確認するべき
駅までの道のりや、普段の買い物への通り道、通学路などに気になる工場などがないか、あるいは物件のすぐ裏手に工場があるのに見落としたりしていないかどうか、周辺の住宅地図や道路地図などで入念に調べてみることも必要です。
また、工場周辺の環境などは、平日の昼間と夜間・休日ではまったく異なる様相を見せることもありますから、必ず平日昼間(操業時間中)のチェックを欠かさないようにします。
さらに、通行車両などの確認もしておきたいところです。とくに平日の昼間において、周辺の幹線道路や工場への進入経路ではトラックなどがどの程度通行しているのか、普段の生活で歩くことになる道路に危険性はないかなど、十分に注意しながら見ておきましょう。
長時間にわたって現地で調べることは困難でしょうから、近隣の住民に街の様子を聞いてみるのでも構いません。
工場の立地するエリアなどでは夜間の人通りがほとんど途絶えてしまい、車両の通行などとは別の危険性が潜んでいる可能性もあります。駅や学校などからの帰り道にそのような場所がないかどうかについても、しっかりと確認しておくようにします。
なお、工場跡地などでは土壌汚染の問題にも気をつけなければなりません。
現在の新築分譲物件であれば、土壌汚染の調査結果や、汚染対策を講じた場合にはその内容などが説明されますが、以前に分譲されたものが中古物件として流通する場合には、汚染の状況などについてまったく資料が存在しないケースもあります。
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