住宅を取得したり増改築をしたりするための資金を親から贈与されることもあるでしょう。
それがまとまった金額の場合には、相続時精算課税制度の活用を含めて少しでも有利な方法を検討したいものですが、そのためには相続時精算課税制度や住宅取得資金贈与の特例について、よく理解しておくことが欠かせません。
今回は、それぞれの制度のポイントを確認しておくことにします。なお、贈与税の一般的な内容については≪覚えておきたい相続と贈与の基本≫をご参照ください。
相続時精算課税制度とは?
相続時精算課税制度には、生前贈与を促すことによる景気対策の側面もある
一定の非課税枠内の親から子への贈与について、贈与のときには課税をせず、実際に相続が発生したときに相続税によって精算するものであり、「相続税・贈与税の一体化措置」ともいわれています。
本則による非課税枠は2,500万円であり、贈与財産の種類、贈与の回数や金額などについての制限はありません。2,500万円に達するまで複数年にわたって利用でき、非課税枠を超えた部分については一律20%の税率により贈与税を納めることになります。
そのため、相続時精算課税制度だけを適用する場合には、取得する住宅の種類などについて何ら制限はなく、土地や家屋の現物による贈与も可能です。
相続時精算課税制度の年齢要件に注意
次ページで説明をする「住宅取得等資金の贈与税の非課税」と相続時精算課税制度を併用する場合であれば親の年齢は問われませんが、本則による2,500万円の枠だけを適用する際には「贈与をする年の1月1日時点で満65歳以上」という制限があります。また、贈与を受ける子(受贈者)は本則か住宅取得資金かに関わらず、その年の1月1日時点において満20歳以上でなければなりません。
相続時精算課税制度の対象は親から「直系卑属の子である推定相続人」(養子を含む)への贈与です。ただし、子が既に亡くなっている場合の孫など、代襲相続人は相続時精算課税を選択することができます。
なお、平成27年1月1日からは親の年齢制限が「満60歳以上」へ引き下げられることになっています。それと同時に、祖父母から孫(20歳以上)への贈与でも相続時精算課税制度を適用することができるようになります。
相続時精算課税を選択すると、贈与税の基礎控除は使えない
相続時精算課税を選択する場合には、贈与を受けた年の翌年2月1日から3月15日の間に税務署へ届出書を提出することが必要です。このとき、相続時精算課税を選択した相手(父または母)からの以後の贈与について、贈与税の基礎控除(年間110万円)は永遠に使えなくなりますので注意しなければなりません。
いったん「相続時精算課税選択届出書」を提出すると、実際に相続が発生するまで継続して適用されることになり、その撤回や取消しはできないのです。
また、父からの贈与について相続時精算課税を選択し、母からの贈与については暦年課税による基礎控除(年間110万円)を適用すること(あるいはその逆)も可能です。
贈与税の計算にあたっては、相続時精算課税を選択した親からの贈与とそれ以外の贈与とを区分し、相続時精算課税の対象とならない贈与の総額に対して年間の基礎控除額を適用することになります。
≪住宅取得等資金の贈与税の非課税措置の主な要件…次ページへ≫