敷地の境界自体に争いがある場合には、それを確定させるためにさまざまな手続きが必要となりますが、その説明は別の機会にすることにして、今回は「境界は明確であり、隣家の越境も明らかである」ということを前提に、その場合の対処法を説明しましょう。
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その敷地を購入して建物を新たに建築しようとする場合に支障が生じるのか、建て替えをしなくても日常の生活に支障があるのか、あるいは特段の支障はなく我慢できる範囲内であって、将来的に越境が解消されればよいのかなど、越境の度合いによって対処の仕方が異なってきます。
越境による支障が生じているときの対処法
建築に際して直ちに支障が生じたり、日常の生活にも支障が生じたりするようであれば、売買契約を締結する前に、売主の責任でそれを解消してもらうようにしなければなりません。また、売買契約を先に締結して、数か月後の引き渡しのときまでに問題点を解消するというのであれば、「問題を解消できなければ売買契約を白紙解除する」という特約を明確に盛り込んでもらうことが必要です。
仮に「○月○日までに対処します」という隣地所有者などからの確約書や念書などを用意して、売主や媒介業者が問題解消前の決済を迫ったとしても、それは明確に拒否するべきでしょう。
もし、それで隣地所有者などが約束を反故にしたときには、買主であるあなたは、売主との売買契約における紛争当事者となるばかりでなく、隣地所有者との間における問題の当事者にもなるわけで、二重のトラブルを抱え込むことにもなりかねないのです。
しかし、いずれにしても隣地所有者などからみれば、売主と隣地との間にこれまでは争いなどなかったのに、「買主であるあなたが現れたことが原因で屋根を切らされた」などと、本末転倒の逆恨みをされることがないともかぎりません。
さまざまな要因を考えれば、直ちに支障を生じるような越境がある物件は購入しないことが最も賢明です。その問題を解消することも実際にはそれほど容易ではないでしょう。
当面は越境による支障がないときの対処法
さて次に、当面は支障がなく、将来的に越境が解消されればよいと判断される場合です。このようなときには売買契約の締結前あるいは決済の前に、隣地所有者などの当事者から「将来の建て替えのときには越境状態を解消する」などの文言を入れた文書(合意書、確約書、念書など)を取得します。
このとき、隣地の所有権などが第三者へ移転された場合にもその内容を引き継ぐ旨を併せて盛り込んでもらうようにします。合意書の体裁にして公正証書とすることができれば最もよいのですが、必ずしもそのようにできるとはかぎりません。
また、越境の度合いに応じて地代相当額の支払いを求めるケースもありますが、低額とはいえ金銭の話を持ち出すことで隣地所有者などとの間が険悪になる場合も考えられますから、話し合いのなかで臨機応変に取り決めるようにします。
ただし、このような書面を取得してもそれがいつ実現されるのかは分からないのであり、公正証書でない場合には隣地所有者などに越境の事実を認識させる程度の効力しか持ち得ないこともあるでしょう。
また、将来の隣地の建て替えのときに再び越境しないようにすることは、このような書面の有無にかかわらず当然のことです。しかし、文書を取っておくことにより、将来における隣地とのトラブル発生や、理不尽な要求をされることなどを予防、抑止する効果が期待できます。
なお、このような場合に隣地所有者などから文書を得るための交渉などは、売主の責任においてやってもらうべきものです。
もし、このような文書をスムーズに得られないのであれば、売主と隣地所有者などとの関係が、実際にはうまくいっていないことも予測されるでしょう。
買主であるあなたとの間でも、同様に気まずい隣人関係になる可能性が考えられますから、このようなときにも購入すべきかどうかを慎重に判断しなければなりません。
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