住宅購入の費用・税金/住宅購入費用・予算

共有名義と共有持分のポイント 〔前編〕

共有名義と共有持分については、正しく理解しておくことが欠かせません。住宅購入資金を夫婦や親子で出し合う場合に、考えなければならない名義と持分のポイントを、〔前編〕と〔後編〕の2回に分けて解説します。(2017年改訂版、初出:2006年9月)

執筆者:平野 雅之


住宅の購入や建築をするとき、その資金を夫婦で出し合う場合も少なくないでしょう。このようなときに考えなければならないのが、共有名義による持分をどうするのかという問題です。

また、どちらかの親から住宅購入資金の援助を受けるときなどには、親との共有名義にすることで贈与税の問題を回避できる場合もあります。

住宅の購入などをするときにおける共有名義と共有持分について、その考え方のポイントを2回に分けて解説することにしましょう。まずはその〔前編〕です。


共有名義にするかどうかは事前に決めておくこと

結婚後の夫や妻の収入はお互いの共有財産だという考え方があります。もちろん毎日の生活の中で、「今日の晩ごはんは夫のお金だ」「あしたの朝食のパンは妻の財布から出した」「今月の電気代は夫と妻が半分ずつ負担した」などと細かく分けることはないでしょう。

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購入費用に充てるお金を、しっかりと区別することが必要

しかし、住宅を購入する際は「夫のお金」と「妻のお金」をしっかりと区別しなければなりません。

そしてお互いが資金を出し合えば共有名義にし、実際にいくらずつ出し合ったのかという “結果” によって共有持分を決めることが原則です。

親などから購入資金を借りる場合でも、そのお金が「夫の借金」なのか「妻の借金」なのかを明確にしなければなりません。

したがって、もし妻が専業主婦で収入がなく、自分名義の預金や現金などもなければ、持分の贈与などを組み合わせる場合は別として、共有名義を考える余地はないことになります。

ただし、専業主婦であっても妻の親から金銭の贈与を受けるなどすれば、それは「妻のお金」として共有持分を考えればよいでしょう。

売買契約の締結が終わり、残代金を支払って登記をする段階になってから「共有名義と単独名義のどちらがよいのか」というご質問をいただくこともありますが、「どちらがよいのか」あるいは「共有名義にしたいのか、したくないのか」ということは、売買契約を締結する前に検討しておくべき課題です。

お互いに資金を出し合わなければ購入できないのなら共有名義にするしかなく、夫(または妻)の単独名義にするのであれば、名義を持たないほうは諸費用分も含めて一切の負担をしないことが原則です。

とはいえ、夫の単独名義のときでも、諸費用の一部を妻の預金から出したりするケースは多いでしょう。それが贈与税の年間基礎控除額(110万円)以内であれば問題はありません。


売買契約書などへの署名押印も連名ですること

共有名義にするときは、売買契約書などへの署名押印も連名でするようにします。もちろん売買契約の締結前に行なわれる重要事項説明も共有名義予定者全員が一緒に聞くようにし、「説明を受けた」という重要事項説明書への署名押印も、同様に連名でしなければなりません。

ただし、この時点では共有持分の割合が決まっていなくても構いませんし、売買契約書などへ共有持分を記載する必要もないでしょう。

もし万一、単独名義のつもりで一人だけが署名押印をした後、決済前に共有名義へ変更したいということになれば、不動産業者の担当者とよく話し合ったうえで、それぞれの書類へ署名押印を付け加えるか、もしくは書類自体を差し替えてもらうことになります。

そうしなければその後の登記などができないというわけではありませんが、登記の申請に際して余計な手間が増えることも考えられます。

また、売買契約書と重要事項説明書および媒介契約書に共有名義人全員の署名押印が揃っていなければ、不動産業者は宅地建物取引業法違反を問われる状況にもなりかねません。


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