ビー玉は床の傾斜の判定に役立つのだろうか?
しかし、もともと完全な水平ではない地盤のうえに職人が手作業で建物を造るのであり、ある程度の施工誤差は仕方がありません。
「完全な水平」や「完全な垂直」は無理だとしても、それではどの程度の施工誤差まで許容するべきなのでしょうか? また、よくありがちなビー玉によるチェックは役立つのでしょうか?
今回は、床の傾斜がどの程度ならビー玉が転がるのか、簡単な実験をしてみましたのでご紹介することにしましょう。
床の傾斜の許容範囲はどれくらい?
床の傾斜についてはさまざまな考え方があるものの、実際のところ「これ以上の傾斜だったら欠陥」「これ以下の傾斜は許容範囲」というような明確な区分はありません。品確法の「住宅紛争処理の参考となるべき技術基準」(平成12年建設省告示第1653号)によれば、3/1000未満の傾斜を「構造耐力上主要な部分に瑕疵が存する可能性が低い」とし、3/1000以上6/1000未満の傾斜を「構造耐力上主要な部分に瑕疵が存する可能性が一定程度存する」、6/1000以上の傾斜を「構造耐力上主要な部分に瑕疵が存する可能性が高い」としています。
ただし、これは「長さが3m程度以上(壁や柱など垂直面については2m程度以上)の2点間」における傾斜の目安であり、3m未満の2点間については必ずしもこの基準に当てはまるわけではないことに注意しなければなりません。
6/1000というのは1mにつき6mmの傾斜に相当し、10mでは6cmということになります。「そんなにずれていたら大変じゃないか」と感じるかもしれませんが、一定方向に傾斜の続くことのほうが稀でしょう。
ミクロの視点で考えれば、傾斜が上がったり下がったりを繰り返しながら、全体的なバランスを保っていることになります。
逆に、一定方向への傾斜が続いているようであれば、不同沈下によって家全体が傾いている可能性を疑うべきかもしれません。
6/1000以上の傾斜は欠陥なのか?
品確法による参考基準を上に示しましたが、「床の傾斜が6/1000以上だったら欠陥だ」と断定することもできないのが難しいところです。さまざまな要素をつき合わせて、総合的に判断しなければなりません。住宅を購入する側の立場からすれば、床にほんの少しでも傾きがあれば気になってしまうところでしょうが……。
同様に3/1000未満の傾斜であっても「欠陥はない」と断定はできませんし、部分的に10/1000までの傾斜があっても「生活に支障がなければ許容すべき」とする考え方もあるようです。
一般的には、新築住宅の場合に3/1000、中古住宅の場合に6/1000までを許容範囲の目安とする考え方が多いものの、新築マンションや建売住宅の売主業者によっては、4/1000~5/1000程度を施工精度の社内基準としている場合もあるようです。でも、さすがに6/1000以上を社内基準としている業者はないでしょう。
いざ実験へ
ところで、3/1000とか6/1000とかいっても、一般の人がこれを測ることは困難です。テレビ番組などでは、ビー玉を転がして「欠陥だ」と指摘している場面が登場することもあるのですが、これはどれくらい信頼できる方法なのでしょうか?頭の中で考えていても仕方がありませんので、さっそく実験をしてみることにしました。ビー玉だけではなく、パチンコ玉や鉄球、ゴルフボール、テニスボールなども転がしてみましたのでその結果をご覧ください。
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