都市に残された水や緑など、良好な自然的景観を守り、都市における風致を維持することを目的として、都市計画法による地域地区には「風致地区」が定められています。
厳しい規制の裏返しとして、風格や由緒ある高級住宅地を形成していることも多い「風致地区」ですが、その概要を知っておきましょう。
風致地区の歴史は古い!
風致地区にはお屋敷が多い!? |
実際にはじめて風致地区に指定されたのは、東京の「明治神宮内外苑付近地区」(大正15年)のようですが、昭和初期から順次指定が行なわれ、最近でも福岡県久留米市浦山地区が風致地区に指定(平成18年12月)されています。国土交通省が公表している資料では、全国における風致地区の指定は758地区、延べ169,481.06ヘクタール(平成19年3月31日現在)となっています。
風致地区の指定は数ヘクタール程度の場合もありますが、東京の大田区、世田谷区にまたがる多摩川地区が1,182.60ヘクタール、神戸市六甲山地区が6,739.00ヘクタールなど、大都市部でもかなり広範囲に指定されている例があり、一般には知名度が低い(たぶん低いと思う)わりに意外と身近な制度だともいえるでしょう。
ただし、都市の風致を “維持” することが目的の制度であり、良好な自然環境や住環境をこれからつくろうとするものではありませんから、基本的には「現状の環境を変えないこと」に主眼が置かれています。
規制の内容は地方公共団体の条例で
風致地区の指定は、10ヘクタール以上であれば都道府県または政令市が、10ヘクタール未満であれば市町村(東京特別区を含む)が行なうことになっています。そして、次に挙げる行為をしようとするときには、あらかじめ都道府県知事(または政令市、中核市、特例市の長)の許可を受けなければなりません。ただし、10ヘクタール未満の風致地区内においては市町村長の許可となります。
□ 建築物その他の工作物の新築、改築、増築または移転
□ 建築物その他の工作物の色彩の変更
□ 宅地の造成、土地の開墾その他の土地の形質の変更
□ 水面の埋立てまたは干拓
□ 木竹の伐採
□ 土石の類の採取
□ 屋外における土石、廃棄物または再生資源の堆積
□ その他、都市の風致の維持に影響を及ぼすおそれのあるものとして条例で定める行為
水面の埋立てや干拓を個人が行なうことはないでしょうが、建築物の新築など、住宅に大きく関わってくる部分も少なくありません。これらの「行為規制」に関わる具体的な内容(許可の基準)、あるいは緩和規定、不適用規定などについては、地方公共団体の条例で定められることになっており、全国一律ではありません。
それでは、次のページで住宅の建築に関わる規制の例をみていきましょう。
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