凝りまくって自分でつくるのもよし、
建築家と一緒にクリエイティブを楽しむのもよし
コーポラティブハウスで実績のあるアーキネット(渋谷区・織山和久代表)が2001年
に竣工した松濤コートハウスを取材しました。住まい手の一人である白田さん(36歳・
仮名)の好意で、中までじっくり見せていただくことができたわけです。
松濤コートハウスは、現在4軒の実績と進行中のプロジェクト9軒をかかえるアーキ
ネットの初期の1作です。場所はなんと渋谷区の松濤、神泉駅から徒歩5分という好
立地。テラスからは渋谷の街並みが一望できます。うらやましい!
「ここはもと駐車場だったところが競売で出ていて、それを競り落として買った土地
ですね。だから場所のグレードを考えると、ほんとに申し訳ないぐらい格安。すべて
がこうとは限りませんが、それでも通常の宣伝広告費や営業費や在庫リスクを含め
た分譲マンションの価格にくらべて2~3割は安いのがコーポラティブハウスです」
と織山さんは言います。
コーポラティブハウス方式では、まずは入居者が確定してから土地を取得し、建築家
と施工会社を決めて設計・施工を発注するケースが多いため、通常の分譲マンション
のような宣伝広告費(これがバカにならない!)や売れ残りを抱えるリスクを考えな
くて済むというわけです。
それともうひとつ大きいのは、自分の居住空間は自分たちの生活スタイルに合わせて好きにデザインすることができるということ。さらにくわえて、そこに集う入居者たちの間に生まれる連帯感や入居後のコミュニティといった付加価値もあります。
つまり、土地付き一戸建てを都心に持つのは大変だから、同じ指向の人たちが集まって共同で集合住宅を安くつくろうというわけですが、これからの若い世代の都市生活者にはまさにうってつけの方式と言えそうです。
ただ本来のコーポラティブハウスは、有志が集まってつくる「住民主導型」であるのに対し、日本で定着しつつあるのは建築コーディネーターやプロデューサー的な働きをする企業が主体となってプロジェクトを組み、住み手を募集するという企業主導型。アーキネットはそうした企業のひとつというわけですね。ですが、こうした企業主導型のコーポラティブハウスは、あらかじめ責任の所在がはっきりしていることから日本人の精神風土に合った手法と言えそうです。