建築家・設計事務所/建築家住宅の実例

東京建築散策 1 旧岩崎邸に洋風建築の粋を見る(2ページ目)

千代田線「湯島」駅から3分。シュロの木立の向こうに現れたのは三菱創始者・岩崎家の旧邸。鹿鳴館やニコラ堂も設計したジョサイア・コンドルの日本初の本格洋館です。

執筆者:坂本 徹也

いっぽう2階には、レディー用の客室、ジェントルマン用の客室がそれぞれあり、それらしくピンクが基調だったり、モスグリーンが基調だったりします。もちろん各部屋には、それぞれデザインの違う暖炉が設えられていました。

 

そしてベランダに面した広い部屋が集会場、きっと晩餐会やダンスの会などが開かれたのでしょう。2階の素晴らしいベランダの列柱は、1階と違ってイオニア式だとか。こちらはちょっぴりアメリカのカントリーハウスのような雰囲気もあります。
パンフレットによると、旧岩崎邸のベースは、17世紀の英国ジャコビアン様式、それにルネサンスやサラセン風のモチーフが採り入れられているとありますが、まるでデタラメのような組み合わせも、全体的には不思議に調和しつつ、それぞれの部屋に違うシークエンスをもたらし、重厚ながらも賑わいのある建築物になっています。そうそう、当時最先端であった純度99.99%のスチールのトイレは一見の価値アリですよー。
 

 

おもしろいのは、この洋館は外国の要人を招いてのパーティなどに使われ、岩崎氏本人は洋館に隣接した書院造りの和館に暮らしていたということ。和館の方がじつはこちらよりもずっと規模が大きく、当時は建坪が550坪もあったとか。

 

天井が洋館の半分もない低さ、部屋の広さも3分の1以下という狭さにもかかわらず、日本庭園に面しての縁側を持つこの和館は、やっぱりとても落ち着く。ここではお抹茶と和菓子のサービス(有料)が受けられますが、なぜか抹茶をすすり、広大な庭に目をやると、さきほど洋館のベランダから眺めた同じ風景がどこかしっとりとして落ち着いて見える。ほっと思わずため息が出てしまいます。
財閥とはいえ、やはり日本人。和館の方にこそ本当の生活があったというのも頷けますよね。素晴らしい洋館を目の当たりにしながら、あたらめて日本建築のよさを思い知らされた1日でした。
 

旧岩崎邸
竣 工 :1896年(明治29年)
施 主 :岩崎久弥・三菱財閥3代目当主
入館料 :400円、65歳以上200円
開館時間:9:00~17:00(12/29~1/3のみ休館)
問い合せ:03-3823-8340
 

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