かつてのギャンブルシティが
住み続けたい街に変貌したのは再開発がきっかけ

東京競馬情

東京競馬情内。広大な敷地内には子どもの遊び場もあり、地元のファミリーには楽しい遊び場のひとつ。ただ、開催日には渋滞がひどいなど不満の声もある

ところで、競走事業についてはあまり芳しくないイメージを持つ方もいらっしゃるはず。特に府中市には東京競馬場、多摩川競艇場(競艇を施行しているのは青梅市と小平市、日野市、東村山市、国分寺市からなる東京都四市競艇事業組合)の2つのギャンブル施設があり、一時はギャンブルシティというあまり芳しくない言い方をされていた時期もあったほど。

 



府中駅南口再開発エリア

ペデストリアンデッキの左手にあるのが映画館なども入った複合ビル『くるる』、右奥に見えるのが伊勢丹

これが変わり始めたのは府中駅の南口再開発以降。地元で50年近く不動産業を営む守屋商会の槇ヶ垰(まきとうげ)さんによると「駅南口では平成8年3月に伊勢丹、専門店街フォーリス、平成17年3月に住居も併設した複合ビル『くるる』が完成していますが、特に『くるる』完成以降は街行く人の年齢層が若返り、街の雰囲気が全体に変わってきました」。元々は平屋中心、細い路地に商店が密集する下町っぽい駅前だったそうですが、それが一新されたことでイメージが大きく変化、今の人気につながったわけです。

 


再開発の看板

駅に面した空き地に建てられた再開発を知らせる看板。この辺りは広場になる予定(クリックで拡大)

順に行われてきた南口の再開発のうち、最後に残されてきた第一地区がようやく動き始めました。平成23年5月に都市計画が認可され、以降、立ち退き交渉などが始まっているのです。該当するエリアは府中駅、けやき並木通りに面した約1.1ヘクタールで飲食店が密集する路地のほか、けやき並木通り沿いのビルなども含まれています。計画されているのは地下4階、地上15階の複合ビルで1階に周辺の既存店舗、4階に飲食店などがはいる予定で上階には140戸ほどの住宅も予定されています。

 

ケヤキ並木

府中といえばこの堂々としたけやき並木を思い出す人も多いだろう。イベントの際にはしばしば会場ともなる(クリックで拡大)

防災の観点からすると、現在の密集エリアに問題があるのは分かりますが、現状の再開発計画にも問題があります。25年度に工事に着工することになっていますが、24年夏の時点で駐車場の入り口がどこになるかが決まっていないのです。これまでの再開発で登場した他ビルでも週末などには駐車場待ちの渋滞ができているそうで、どこに入り口を作るかは街全体の問題です。現状では反対の多いけやき並木通り沿いにできる計画となっていますが、ここは市がいずれ車の通行を禁じ、遊歩道にしたいと現状でも日曜日には歩行者天国になっています。そこに駐車場の入り口を作るとすると、日曜日には駐車場が使えないことになります。また、府中のシンボルともいえるけやき並木に大渋滞を作り、排気ガスをまき散らすのがこの街のためになるものかどうか。

 

飲食店の多い路地

飲食店や食料品店、履物屋さんなど様々な職種の店が並ぶ一画。店舗を借りて営業している人も多い(クリックで拡大)

また、駅前の飲食店街はこの街でも有数の繁華街。再開発終了まで他の場所に移転することになり、また、再開発後はビルの中に入ることになりますが、そこでも今の活気を保ち続けることができるかどうか。下町っぽい猥雑さも街の魅力のひとつと考えると、金太郎飴的な開発には疑念もあります。

 

昔の看板

再開発地区内の掲げられていたかつてのこのエリアの商店の地図。すでに無くなった店もあり、変遷が良く分かる。個人的にはこれは保存しておいてほしいと思うが(クリックで拡大)

もうひとつ、冗談のようですが、工事が始まって遺跡が出たらどうなるのかという懸念もあります。該当地域は大國魂神社のすぐ近くで、遺跡が出てもおかしくはない立地。2010年にこの記事の取材をした折に府中本町駅近くにあったスーパーが取材直後に一時閉店、建替え工事を始めたところ、重要な遺跡が発見され、閉店を余儀なくされたということがあるくらいですから、ここで何か出ても不思議はありません。その場合に計画がどうなるのか、そのあたりも出たら出たで考えるということのようですが、果たしてそれで良いものか。せっかく、何年もかけて意見をまとめてきた計画です、今後の府中がより良い街になるよう、もう少し知恵を絞ってみてもいいのではないかと思います。

 

水田とタワーマンション

都心からさほど離れていないのに、自然を身近で楽しめる点がこの街最大の魅力

以上、府中という街の魅力を見てきました。もちろん、途中で触れたようにスーパーや保育園など人口増に追いつけていない施設もありますし、保育園不足はやがて小学校などの問題に結びつかないかという懸念もないわけではありません。また、通勤時に時間がかかる、市内の13駅間相互のアクセスが悪い、その他不満もないとは言えません。が、そうしたマイナス面を知っていたとしても、訪れてみると住み続けたい人が多いことに納得できるのが府中という街。特にファミリーであれば住みやすい街のひとつとしてお勧めしたいところです。

府中の住宅事情については別の記事で詳細にご紹介します。

*2013年9月の記事に加筆修正。

※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。