同じ町内に高台と低地、
異なる雰囲気の街が存在

綱町三井倶楽部

このエリアで最も高い場所に位置する綱町三井倶楽部。大正2年にジョサイア・コンドルが設計した威風堂々とした本館が人の目を引く。残念ながら会員以外は入れない(クリックで拡大)

一般に田の付く地名は低地であることが多いとされますが、不思議なことに港区三田は必ずしも低地ではありません。確かに田町駅から桜田通りにかけては低い場所もありますが、慶應義塾大学の三田キャンパスは外から見ても分かる高台立地。また、綱町三井倶楽部やオーストラリア大使館なども三田駅からはもちろん、麻布十番駅からも坂を上るヒルトップの土地。同じ三田といっても、高低差が大きいのです。

 

慶應仲通り

飲食店に交じって書店、洋服店などが並ぶ慶應仲通り。不思議に思うのだが、学生街にしては書店は少ない。なぜだろう?(クリックで拡大)

その高低差が街の雰囲気の違いに繋がっています。都営浅草線三田駅を最寄りとするエリアは三田と芝になりますが、芝から桜田通りまでは平坦な土地でオフィスビル、商店街などが広がる場所。特に三田駅から桜田通りまでの間には繁華な飲食店街があり、この街で学ぶ、働く人たちの胃袋を満たしてくれています。

 
綱坂

綱町三井倶楽部の脇にある長い坂に建てられていた案内板。このほか、綱の手引き坂なる坂もある(クリックで拡大)

それが桜田通りを渡って坂を上ると大学、大使館や高額なマンションが並ぶエリアに。その多くはかつてこの地に点在していた大名屋敷を転用したもので、鬱蒼とした緑、クラシカルな建物、長く続く石積みの塀など、ところどころに歴史を感じさせる風物も残されています。特に綱町三井倶楽部周辺は俗説ではあるものの、鬼退治で有名な平安時代の武将渡辺綱の出身地とされており、江戸時代には神格化されるような土地であったようです。

 

ちなみに三田の由来は古く神領に寄進された土地を神田あるいは御田と称したところから転じたもの、その昔、朝廷に年貢米を納めていた屯倉(みやけ)だったところから転じたものの2説があります。エリア内の第一京浜沿いに御田八幡宮、4丁目に御田小学校があることから考えると、前者の説を信じたいところです。

学校、大使館に高額マンション、
意外に緑も豊富

学校が多い

左に日本電気、その反対側にオフィスビルとも見える東京女子学園高校、戸板女子短大が(クリックで拡大)

さて、その三田駅周辺エリアに多いものといえば、なんといっても学校。地名がイコール大学を意味すると言っても過言ではない慶應義塾大学と慶應義塾中学校、慶應義塾女子高はもちろん、芝には東京女子学園高校、戸板女子短大があり、それ以外にも都立高校、専門学校などが点在。若い人の多い街です。

 
オーストラリア大使館

モダンなオーストラリア大使館。建物の前の道を下ると麻布十番(クリックで拡大)

学校と並んで多いのが大使館。前出のオーストラリア大使館に加え、イタリア大使館、ハンガリー大使館、クウェート大使館などなど。オーストラリア大使館はかつての会津藩松平家の下屋敷で、イタリア大使館は松平松平隠岐守の中屋敷。ついでに言えば、慶應義塾大学は肥前島原藩の松平主殿頭(とのものかみ)の中屋敷で、慶應仲通りの飲食店街の一画には赤穂浪士を預かった三河岡崎藩水野家の水野監物の屋敷跡もあり、この辺りは大名屋敷銀座とも言えるようなエリアだったようです。

 

薩摩屋敷跡

植え込みの中に何気なくあった掲示。かつての姿を妄想してみるのも面白い(クリックで拡大)

そしてこのエリアには昔、競馬場もありました。現在の日本電気本社がある場所がそれで、ここにはかつて薩摩藩上屋敷がありました。明治10年に屋敷跡地に三田勧業局育種場が設置され、開設を祝う競馬が行われたのが最初で、その後、明治23年までは春秋に定期的な競馬が開催されたのだとか。もちろん、現在のこの地にはその当時を偲ぶものはなく、強いていえば日本電気本社敷地にある薩摩屋敷跡という碑がある程度です。

 
神社と東京タワー

あちこちに小さな神社が点在しているのも歴史のある街らしいところ。東京タワーを背景に神社という、新旧が入り混じる東京らしい風景(クリックで拡大)

寺も目につきます。特に集中しているのは都営浅草線泉岳寺駅にも近い三田四丁目界隈。このあたりの寺院は江戸の寛永年間に江戸城拡張のため、八丁堀から芝、三田への移転を命ぜられて移転してきたそうで、三田寺町という呼称もあるとか。関東大震災、東京大空襲にも被災していないエリアでもあり、歴史を感じさせます。ただ一般的には無名な寺が多いのが特徴です。

 

三田綱町パークマンション

人目をひく真っ白なツインタワー、三田綱町パークマンション。背後にある綱町三井倶楽部、隣接する慶應義塾大学の緑を借景にしている(クリックで拡大)

もうひとつ、このエリアで忘れてはならないのが、日本の高層マンションの先駆的存在で、かつ資産価値が落ちないマンションとしても知られる三田綱町パークマンションです。綱町三井倶楽部の緑を借景に、慶應義塾大学の横に建つ白いツインタワーで、建てられたのは1971年。タワーマンションなどという言葉のない時代で、ここより高い建物としては東京タワー、霞が関ビルがある程度。当然、眺望の良さをアピールしても理解してもらうのが難しかったそうです。

 

三田綱町パークマンションを高いところから

中央に見えるのが三田綱町パークマンション。その後、設備、共用部などはいろいろな意味で進化したが、広さ、間取りなど今から見ても進んでいる部分は多い(クリックで拡大)

建物の高さ以上に先進的だったのは専有面積約116平米以上という広さと、すべてが角住戸という優れた設計。また、今でいうメニュープランを採用してもおり、共用部、管理などにも最新のアイディアが取り入れられ、時代の何歩も先を行く物件だったと言えます。2015年現在で築44年になりますが、古さよりも堂々とした貫録を感じる物件で、55~60万円程度の賃料で賃貸に出されているケースが目に付きます。

 

銭湯

生鮮食料品店は少ないが、意外なモノもある。銭湯だ。駅から数分、飲食店の間に埋もれるように存在する万才湯(クリックで拡大)

逆に少ないのは生鮮食料品を扱う店。全くないわけではありませんが、小規模な店舗が点在しているという状況。ドラッグストアはありますし、都心には珍しく大型ホームセンターもあるのですが、1軒でなんでも揃うようなスーパーだけがなく、それが残念なところです。

 
続いては都営浅草線三田駅周辺の住宅価格を見ていきましょう。

新築マンションは田町駅より海側、
賃貸はマンション中心でワンルームが11万円~

田町駅から芝浦側を望む

田町駅、駅舎の向こうにタワーが見えている。芝浦側では今後もマンション建設が続く(クリックで拡大)

町名で芝、三田というあたりは古くから開発されてきた場所です。そのため、新しく住宅を建てる土地は少なく、三田駅周辺と検索をかけても出てくるのは田町駅の海側、芝浦の住所である場合が大半。特に新築物件はほぼ芝浦に立地していると言ってもよいほど。規模の大きな、時によってはタワーなどが建てられています。ただ、最寄り駅は田町になりますから、ここでは芝浦アドレスは取り上げないことにします。

 
さて、芝、三田で探すとなると、非常に制約が出てきます。まず、新築マンションはほぼ期待薄。土地の状況を考えると今後もあまり状況が変わるとは思えません。

中古マンション

三田から白金方面を見たところ。単身者向けの分譲物件も少なからず供給されている(クリックで拡大)

中古になると多少はありますが、数はそれほど豊富ではありません。70平米前後のファミリー向け物件で築年数が10年~10数年で6000万円から、場所によっては9000万円くらいまで。もっと広い80平米前後になると7000万円から1億円オーバーということも。ご家族で住むには8000万円くらいの予算を考えておかないと難しいようです。

 

中古マンションちらし

駅から2分で2980万円とあったが、広さ、築年は不明。古い物件も多いエリアである(クリックで拡大)

カップルでもう少しコンパクトな物件で良いということなら、50平米前後で5000万円といったところ。築40年前後と古くなるともう少し手頃になり、それでも4000万円~。単身向けの築40年前後の30平米台でも2000万円~はします。また、一戸建てはあまり市場に出てこないので、よほど予算が潤沢にあり、時間をかけて探しても良いというのでない限り、探す作業ですら難しいと思ってください。

 
都営住宅

三田駅の上には都営芝5丁目アパートがあるが、こうした好立地で空が出ることはほとんどない(クリックで拡大)

次に賃貸ですが、古い木造住宅は少なく、大半がマンション。そのため、相場は高めでワンルーム、1Kで11万円~、2DKで20万円前後、3DKになると30万円が目安。高額な物件であればかなり幅はあり、前出の綱町パークマンションでは二戸を繋げた120万円超の物件も。高いものであれば、かなりバリエーションは豊富というわけです。

 

大学構内

大学の街というイメージが強い三田。いつも賑やかな印象があるが、一本裏に入るとイメージとは異なる静けさ。ぜひ、歩いてみて欲しい(クリックで拡大)

住宅価格的にはハードルの高い街ですが、歴史の深みがある街並み、濃い緑など魅力もいっぱい。足回りの利便性の高さも申し分なく、特に子どもの教育を考えて選ぶなら、住んで良かったと思える街のひとつです。




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