命の重要さを勘案し、教養教育を重視

1991年に大学設置基準の見直しが行われたときに、ほとんどの日本の大学でも教養部が廃止、改組された。より日本の大学は、専門化していったと言えるだろう。ところが、東京医科歯科大学では、この教養部が存続している。むしろ、非常に重点がおかれていると言えるかもしれない。人間の命に関わる医療に従事する専門家の育成の点から見て、教養教育の必要性が重視された結果だろう。

東京医科歯科大学は、6年間の教育課程の最初の2年間での教養教育に重点を置いている。教養教育は、以下の4つの点から構成。

  1. 市民社会の一員としての自覚とそこで生きるための能力
  2. 科学的に考え、理解し、学ぶ能力
  3. コミュニケーションに必要な技術と能力
  4. 専門教育に必要な基礎学力や思考能力、技術

1は、「市民社会の一員として地球と世界を知り、市民社会の一員としての社会的倫理規範・法規範を理解し、他者と自己および社会との関係性を理解し、果たすべき責務を引き受ける能力を身に付ける」ということだ。京都大学でさえ、社会常識を教える講座を開講するという時代である。医療に携わって人の命を預かるという重責からすれば、当然のことだろう。

2は、方法論的にいろいろなことを論理的に考える能力を養うと言うことを意味している。

3は、「相互理解のための言語的、身体的コミュニケーション技術および情報を取り扱う技術を習得し、それにふさわしい表現技能を身に付ける」ということ。患者に的確にまた思いやりをもって接するためには必要なものだろう。

4は、「医学・歯学の専門教育に必要な基礎学力、論理的思考能力、実験技術、および発表技術を身に付ける」こと。

東京医科歯科大学では、日本国内は言うまでもなく、国際的な舞台で活躍できる専門家を育成しようとしていると言えるだろう。そのために、教養教育がいかに必要かという点で見れば、一見「教養部」という懐古趣味的な名前が非常に意義あるものに感じられる。

最近の大学の中には、学生を集めたいがために教養教育を廃止し、見た目上だけでの大学の改組改編を行う例が見られる。東京医科歯科大学のように、明確な「哲学」を持つ大学があることに驚かされるだろう。