円の実質実効為替レート
これを見ると長期には1995年をピークにそこまでが円高、以降はずっと円安の流れです。しかし名目では95年以降もずっと円高なので錯覚をしてしまいます。企業や投資家は円安を望みますが、実際には円高だった一昔前までが日本の黄金期であり、 企業も株価も絶好調だった時代であり、本末転倒している現状です。1995年は日本の名目GDPが歴史上最高を記録した年であり、そしてその頃を境に日本の労働者人口が減少し、一人当た りGDPも1位から20位以下に転げ落ちてきました。為替水準は国の競争力を示し、それが現在落ちているのが円とドルです。人民元はドルと一緒になって動いているために名目価値が落ちていますが、実質的には価値が上がっている通貨なので割安と思います。
この実質ベースでの円安の意味するところは、日本は、物価が安定しているわりには、そこまで円が上がっていないということです。物価の上がらない国の通貨は物価の上がる国の通貨に対して本来 どんどん強くならなければなりません。本来なら円は、例えば対ドルで名目60円くらいにな らなくてはならないところを90円程度に収まっているので、実質ではその分、円安となっているのです。この90円と60円の差は円に弱点があって売られているから生じるものです。売られる理由は日本の財政の問題です。具体的にはGDP比率で人類史上最大の、天文学的財政赤字と低経済成長性です。
この流れは今後も続き、(名目でなく実質での)円安トレンドは今後も続くでしょう。しかし長い実質円安トレンドの中で昨年急激に円高に振れ、現在も円安トレンドのレンジ内では比較的高いレベルにあります。これは一種のハプニングのような現象とみますが、結論的には、やがて1973年レベルの実質的な円の価値に下がって行くと思われ、そうであれば円が短期に高いこの1年のうちに外貨に替える、或いは外貨建ての株式等の資産に安値を狙って換えて行く年にするという戦略が考えられます。
うまく行けば手持ちの対外資産は価値の薄れる円ベースで大きく膨らみ、将来想定される円の下落から逃れることができます。ただし全ての資産を円から外貨に換えるような極端に博打的なことをする事を勧めるものではなく、考えられる一つの想定円シナリオとして、そうならなかった時に許容できる最大限の資産範囲で実行してくのが良いと考えます。