信州で初めての芋焼酎『山ん中』
2005年も明けてひと月だが、今年は焼酎、さて、どうなるのだろうかと思っていた矢先、信州は飯田の知り合いから「信州初の芋焼酎」というのが送られてきた。名前は『山ん中』。送り主は長野県飯田で酒屋を営むご主人。一度お店を訪ねたことがあったが、たしかに四方を山に囲まれた「山ん中」の町で、私が訪ねたその季節には杏の花が咲き乱れ、町中が甘酸っぱい香りに被われていたことを名前を見て思い出した。
このご主人が代表をつとめるのが「信州いも倶楽部」なる会。旨い芋焼酎を造ることを目的に昨年発足された。メンバーは酒販店、居酒屋、デザイナー、建築家、マスコミと多彩で、いも植え&収穫&剪定、商品の企画、酒質決定のテイスティング等を行なったのだとか。楽しみながら商品つくりを行なう姿が見えるようだ。
信州初の芋焼酎『山ん中』 |
スマートでスタイリッシュな味わい
芋は黄金千貫、麹は黒の本格派。日本酒蔵が余剰酒利用で造る蒸留酒とは一味違う気合の入った乙類焼酎なのだ。もともと飯田は「芋干し」の原料として黄金千貫を作っていた土壌であったことも、今回の商品化に拍車をかけたらしい。昨年12月10日に4合瓶1000本、1升瓶40本限定で発売した。なかなかの希少商品だ。いずれは、焼酎購入予約者に、いも植えやいも掘り、仕込みに参加してもらうような仕組みを造りたいというアイディアも出ているらしい。うう~ん、やってみたいっ。
香りと味だが、芋独特のふわっと甘い個性を十分にもっているが、南九州勢と比べるといくぶん線が細い。でも、たぶん新酒だと思うが、柔らかく練れたような舌触りで、なにより飲みやすい。信州生まれの芋焼酎はスマートでスタイリッシュな印象だ。
しかし、グラスを鼻に持ってきた瞬間と飲んだあとから戻ってくる香ばしさはなんともあとを引く。一杯や二杯ではすみそうにない旨さを秘めている。ふむ、ただの気取ったスレンダー美人ではなく、奥深い魅力をもった気立てのいい美人のようだ。
「芋焼酎は絶対ロックじゃなきゃ飲めない」などとほざいている底のあさい、いや、ただのミーハー、いやいや、芋焼酎初心者に飲ませたら、「これ、ストレートでいける」とグビグビ。たしかにソフトさとコクのバランスがいいので生でも飲めるのだ。
とはいえ、お燗派の私は半々くらいの水割りでゆっくりいく。香ばしさが増す。意外かもしれないが、きっちり塩のきいた生ハムとかサラミ、スモークハムなんかあわせると飽きない。山の風にふかれた北イタリアの高級ハム“サンダニエーレ”などあれば最高だろう。山の酒には山の食材がやはり合う。
今年はこんな風に焼酎をやってみたいと想像が膨らんだ。
■信州初の芋焼酎『山ん中』 720ml 1250円(税込) 1.8L 2800円(税込) 喜久水酒造(長野県飯田市) 0265-22-2300 松屋ごとう酒店(長野県飯田市) 0265-22-0456 |