イラン産のピクルス。なかでも5年以上漬けたニンニクはイランでは高価なものとして知られている。イラン料理を出す「おつかれさん」は、西武新宿線新井薬師前駅(高田馬場駅から電車10分弱)から徒歩1分の場所にある。料理を手掛けるご主人はイランの方である。以前はうなぎとスッポンなどを看板料理とした日本料理店で長い間修業していたそうで、うなぎとスッポンをさばくのはお手のもの。和食もおおよそひととおりは作れるのだという。そんなご主人と話していて、とても印象に残った言葉があった。「イランでも、イラン料理以外の料理を食べさせてくれるところはいろいろあるけど、イラン人はみんなイラン料理ばかり食べていて、ほかの国の料理はほとんど食べないよ。でも僕はそれがいいとは思わない。いろいろ食べてみればいいじゃない、と思うよ。だって、そうしたらイラン料理がもっとよくなるかもしれないじゃない。」手前は、イランで元気が出るといわれている、6時間じっくり煮込んだ「麦のスープ」。奥はたっぷりの野菜とパスタを煮込んだ「農夫のスープ」。うん、確かに。いままで築きあげてきたイランの伝統料理をしっかりと見据えたうえでなら、それはよくわかる。日本料理だって、色々な国の料理がはいってきて、少しずつ変わってきているわけだし、イランだって、長い歴史の中で他国の食文化を吸収しながら変わってきて、いまの形になっているわけだもの。もちろん、変わらないことも大切だけれど、少しだけ歩み寄ることも必要なときもあると思う。羊肉にスパイスを入れて焼き上げた「クビデ」。これを目当てにやって来るイラン人が後を絶たない。ご主人はこんなこともおっしゃっていた。「日本では、スーパーにいろいろな国の食材がたくさん売られていて、その日の気分で好きなものを手に入れることができる。ここは日本なんだから、スーパーのような店があったっていいじゃない。ある人は枝豆、ある人はうなぎ、ある人はイラン料理を食べているというようにね。メニューにイラン料理と和食があるから、お客さんにはいろいろ言われるけど、僕はみんながそれぞれ食べたいものを食べればいいと思っている。いろいろ食べられるお店があってもいいと思うんだ。」 「クビデ」は、ナンに焼きトマトとミントとともにくるんで食べる。これだけ聞くと、人によって意見が分かれるだろうが、わたしはこの店が庶民的な雰囲気の街、新井薬師前駅にあることを考えたら、ご主人のおっしゃっていることに頷いてしまった。というのも、イラン料理と限定してこの場所に店を出したらどうだろうか。駅から徒歩1分という便利な場所にあるとはいえ、毎日客が入るのは難しいだろう。だったら、日本人に受け入れられる、いままで修行してきた和食を毎日作ったほうが、店のためにもご主人自身のためにもよいのではないだろうか。野菜のエキスでじっくり下味をつけて焼き上げた「鶏肉のケバブ」。冷めても硬くならない不思議なケバブだ。居酒屋だとおもって入ってきたお客さんが、イラン料理を食べてそのおいしさに魅了されるかもしれないし、同じような居酒屋がたくさんある中で、イラン料理がメニューにあったらお店の個性にもなるわけだから。なによりも、料理を作っているご主人の姿を見ていると、身体を動かして料理を作ることが本当に楽しいんだ、ということが見てとれるから、やはり毎日コンスタントになるべく多くの料理を作ったほうが、ご主人にとってはよいのではないかと思ってしまった。お客さんも、きっとそんなご主人の姿を見ながら料理をいただくのは楽しいのではないだろうか。さて料理だが、はっきりいって驚いた。なにが驚いたのかというと・・・前のページへ123次のページへ