

右:ホームステイ先では、近所でこんなふうに新鮮なミルクを買っていた。
なによりわたしが最も驚いたことは、ブルガリアの食の豊かさ。ブルガリアでは野菜はもちろん、肉や乳製品の旬もとても大切にしている。日本ではいろいろな肉が一年中手に入るので、肉に旬があることなんて忘れているけれど、ブルガリアでは肉や乳製品も季節によって風味ややわらかさが違うからと、なるべく食材が一番おいしい時期に、ここぞとばかり食べている。
市場のお肉屋さん。生肉から羊の頭、内臓、ソーセージと生肉がズラリと並ぶ。たとえば、クリスマスから3月ごろにかけては豚肉、4月のイースターの前後数週間は肉を食べない期間があり、それ以降7月くらいまでは羊肉。そして秋からクリスマス前までは鶏肉、といったように。そうはいっても、市場では旬ではない肉も売られているので、すべての人がこれに沿っているわけではないとおもうけれど、少なからず私が知り合った食いしん坊のブルガリア人たちは、みな口をそろえて、「野菜や肉は一番美味しいときに、思い切りたくさん食べるのが一番いいのよ。来年までもういいとおもうくらい思い切りたくさんね。」なんて笑いながら言っていた。
芽がでるほど古くなったものを売っている?!いえいえ、ブルガリアでは根菜類の芽も好んで食べる。食に関して、日本にいてあたりまえだとおもっていたことが、ブルガリアにくると決してそうではないことがたくさんあることに気づかされた。田舎町に行けば行くほど、食材の季節感を大切にした料理は、どんな食肉も揃う首都ソフィアの高級レストランの料理よりも、わたしにとってははるかに豊かで贅沢な料理だと感じた。サービスや料理の技術は確かに劣るかもしれない。でも、それ以上の産物がなによりも心地よく、体にじんわりとしみわたってきた。
ブルガリアは、ある意味とても豊かな国だと思った。この国でわたしは、食材や人々の素朴な笑顔から本当にたくさんのパワーをもらい、食の楽しさとは何なのかをあらためて学んだような気がした。
<世界の食紀行>ブルガリア編【2】
<世界の食紀行>ブルガリアで習った家庭料理
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