・・・ほとんど人とすれ違わない車通りの激しい通りを歩き、1本の脇道にはいると、エントランスへと辿りつく。素朴な街に忽然と構える青と白のシャープな建物。心地よい期待を胸にドアを開けると、目の前に広がるのは開放的で素朴な空間。温かい空気までも漂う。一瞬目を閉じ、幸福感を楽しみながら料理への期待に胸を膨らませる・・・
板橋区役所駅から歩くこと5分。昨年の10月まで一軒のトルコ料理店がありました。
世界各国の料理のなかで、トルコ料理はわたしが特に気になる料理のひとつ。
なぜそれほどまでに惹きつけられるのかというと、ひと言ではいい尽せないけれど、ひとつには中国やフランスと同じように、料理の背後に強力な集権化が徹底的に押し進められた豊かな帝国、オスマントルコ帝国が存在していたということが大きいのではないかとおもいます。
トルコ人はもともと遊牧民だったため、小麦や大麦などを主食に乳やバター、チーズなどを蛋白源としていた料理を常食していたのが、勢力を拡大していくごとに各国の料理を融合して、贅をつくした王朝料理に発達していきました。
オスマントルコ帝国が存在したことによって、モンゴル料理に近い遊牧民の力強い料理と、ヨーロッパの洗練された料理のモザイクぶりが、魅惑的で面白い食文化となって発達したところにとても興味をそそられます。
トルコ人の食に対する執着心にも共感します。「空腹で物見遊山するより、食べ過ぎて死ぬほうがまし」というトルコのことわざを聞いてから、夜寝る前におなかが空いていたら寝られず、寝床で翌日の3食は何を食べようかと考えてから寝るわたしにとって、さらにトルコ料理に魅了されるようになったのです。
話をとある一軒のトルコ料理店に戻しますが、自国の料理を愛し、日本人にも本当のトルコ料理を知ってもらいたいという想いを一心に、料理を作り続けていた料理人がいました。
その想いが伝わったのか、お店がオープンしてまもなくするとファンがつきはじめたのですが、とある事情でやむなく閉店。
しかし熱烈なファンの激励のもと、今年の3/5に阿佐ヶ谷にオープンしました。
今回オープンして1ヶ月たってからご紹介するのに至ったのは、思い入れが強いお店ほど慎重にならなくては、という想いがあったので、少し様子をみることにしたのです。
(後でそんな心配は無用だったとおもうはめになったのですが・・・)
写真右上は、メゼの盛り合わせ(カルシュクメゼ)
写真左下は、トルコ風ラビオリ(マントゥ)