産む、産まないを選択しなければならないのは、どんな時なのか。そしてその時に、どのように決断すべきなのか、体験談を通して考えたいと思います。
新しいポストをまかされると分かった矢先の妊娠(29歳)
結婚して3年のAさん。仕事も順調で、少しずつ自分の提案が企画として取り入れられるようになってきた。そして、2年がかりの新しいプロジェクトを発足するということで、上司からリーダーとしてやってくれないかと、先日打診をされたばかり…。自分の力を認められることは、とてもうれしいこと |
そんな矢先、妊娠がわかった。「絶対やりたい」と思ったプロジェクト。でも、プロジェクトのリーダーとなると、かなりの激務。メンバーのとりまとめもしなくてはならない。
「妊娠が分かったときは、嬉しいというよりも、随分戸惑いました。もちろん、そろそろ赤ちゃんをという気持ちが、全くなかったわけではないので、避妊はしていなかった」
もちろん妊娠していてもプロジェクトの仕事自体はできる。
「自分としては、やるならちゃんとやりたかった。妊娠してつわりとか体調とか考えると、残業はあまりできないと思ったし。それに、出産するときには休まなくてはならない。出産後数カ月で職場復帰したとしても、赤ちゃんがいる生活の中で、時間を区切った働き方をしなくてはならないだろうと思うと、中途半端な気がしていやだった」
今回授かった赤ちゃんをおろして、プロジェクトの仕事が一段落してから、出産すればいいという考えも頭をよぎった。
仕事か、出産か… |
でも、夫の方はまだ実感もなかったからか、私の好きなようにしていいって言うんです。
迷いながら病院の先生にもらった中絶の承諾書にも、夫はすぐにサインをしてくれました。
でも、私にはサインできなかった」
「プロジェクトの仕事が一段落した頃、私は31、32歳。もちろんまだ妊娠できる年齢だと思うけれど、赤ちゃんが欲しいと思ったその時に、また妊娠できるとも限らない……。
それに、もう一つの命がお腹の中で鼓動しているという現実。やはり、おろすという選択は私にはなかったんです」
プロジェクトの仕事にメンバーとして参加することも辞退してしまったAさん。
「とても魅力的なプロジェクトだったから、やるなら全力でやりたかった。出産後落ち着いたら、またチャンスをつかみ取りたいと思っています」
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