腹帯を「戌の日」につける理由・由来とは?
戌の日にお参りをして腹巻をつけるのは、日本独自の風習
腹帯をつける風習は日本独特のもので、近くの韓国・中国にも、もちろん西欧諸国にもないそうです。なぜ、戌の日にお参りをして、腹帯をつけるという風習ができたのでしょうか。
<目次>
腹巻の由来は神宮(神功)皇后がルーツという説も
神話の類に入るほとんど伝説なのですが、腹帯について調べてみると、神宮(神功)皇后という人の名前がよく出てきます。このお后について少し調べてみました。1800年くらい前に、神宮(神功)皇后(息長帯日売命 オキナガタラヒメノミコト)という、14代天皇のお后がいまして、『古事記』には、三韓(今の朝鮮辺り)を討伐に行った時のこと、お腹に15代天皇の応神天皇を身ごもっていたので、石を帯の中に巻きつけたということが書かれています。その後、戦争に行っていたのにも関わらず、帰ってきて安産をしたため、安産の神様になったようです。
そして、神宮皇后の安産のイメージが、そのまま腹帯=安産のイメージに変わっていったのではないかと見られています。「息長帯日売命」という名前が、長帯という辺り、腹帯をイメージさせるのですが、関係ないのでしょうか?
ちなみに、応神天皇を取り上げた女官がこの帯をもらって、婚儀の時に頭に巻きつけたそうで、それが「角隠し」のルーツだと言われているそうです。
腹帯が一般的になったのは平安時代
それまで、貴族社会で宗教的儀式としてされていた腹帯ですが、平安時代には一般的になってきたようです。この頃は、子どもが多く生まれてしまうのを防ぎ、子どもを減らしていた頃。腹帯は、「この子は育てるぞ!」といった社会に披露する意味もあったそうで、夫のふんどしを腹帯に使っていたりしたそうです。生まれてくる子どもは、夫の分身、という意味もあったようですよ。元々、3メートルくらいある「ゆはだ帯」というのを使っていたらしいのですが、江戸時代以降には、2メートルほどのさらしが使われるようになり、岩のような丈夫な子を産む、という意味から、「岩田帯」とか、「斎肌(いわた)帯」とかいう風に言われるようになったそうです。
江戸時代の腹帯の巻き方:縄のようにきつく締める形
腹帯を巻くという風習を広めたのは助産婦さんだと言われており、難産の場合や、新生児や母親が産後に命を落としてしまったりすると、「帯の締め方が緩くて、胎児が太りすぎた」とか、「帯が緩いと、胎児の場所がズレる」と思われていたようです。そのため、何重にも厳重に、縄を巻くように、きつくきつく巻いていたらしいのです。今でこそ考えると、お腹が大きくなり始めの時期は、普通のパンツでもきつく苦しく感じたりするのに、縄のように巻かれていたら、窮屈で辛そうですね。
江戸時代に活躍した後藤良山や賀川玄悦などは、きつく締める腹帯が、母親にも胎児にも有害だと説き、腹帯は緩く巻くようになったそうです。
歴史はここまでです。
一般的な「さらし」以外にも腹帯の形・素材・種類はさまざま
一般的な「さらし」の腹帯の他にも、今はいろいろな種類の腹帯が販売されています。どれも一長一短。ライフスタイルに合ったものを探してみてくださいね!腹帯の種類その1:さらしタイプ
さらしタイプの腹帯は、きっちり巻かれていて心地よいが、きつくてリラックスできないと感じることも
【短所】自分で巻かなくてはいけない、きつくてリラックスできない
腹帯の種類その2:腹巻タイプ
腹巻タイプの腹帯は、着脱が楽で負担にならないが、ゴムがきついと苦しい
【短所】ゴムがきついと苦しい、素材によっては、分厚くて蒸れる
腹帯の種類その3:下腹部支え一体タイプ
下腹部支え一体タイプの腹帯は、安定感があり腰も楽だが、お腹が大きくなってくると苦しく感じることも
【短所】大きくなってくると苦しい、素材により違いがあるかも?
腹帯の種類その4:補助腹帯タイプ
【長所】取り外し可能で、苦しくなったら取り外したりできる【短所】面倒でつけなくなったりする、別途お金がかかる
※楕円で囲まれている部分。さらしタイプや腹巻タイプの上からつけます
腹帯の種類その5:マタニティガードルタイプ
マタニティーガードルタイプの腹帯は、動き回る人におすすめだが、股ずれすることも
【短所】股ずれすることがある、窮屈で蒸れる素材が多い
簡単な巻き方を解説:さらしの腹帯タイプ
ここでは、実際のさらしの帯の巻き方を解説します。実際に巻いてみてくださいね。腹帯をする必要性って?
腹帯をする理由は、やはりおなかを冷やさないようにとか、母親としての自覚を持つためにとか、つけていると楽だからなど、いろいろと言われてます。他の国では、腹帯をしていなくても普通に産んでいるからと、腹帯をつけない主義の人もいます。ただ、妊娠中の起き掛けに、子宮のある下腹の辺りを触ってみると、他の部分は暖かいのに、その部分だけヒンヤリ冷たくなっていた……なんて経験がある方もいるのでは。お腹が冷えやすくなっているのかもしれません。
また、お腹が大きくなり始めたのが夏だと、腹帯をするのが暑苦しくてなかなか着用する気にはなれないでしょう。ただ臨月に近づくと、お腹が引力に引かれるように重くなってくるので、していたほうが楽だったという声も聞きます。
腹帯をつけたくないときはどうする?
でも、したくないという人もいるはず。してないと、周りの方に「どうしてしないの?」と聞かれたり、なぜか、怒られたりすることも……。特に年配のお母様方は、腹帯にこれでもかというほどこだわる方がたくさんいらっしゃって、会うたびに「腹帯はしているのか」と確認されることもあります。夏に汗をかいても「腹帯をしなければ!」と蒸れてもかゆくてもし続け、あせもやかゆみがひどくなったという人もいました。
ライフスタイルに合って、つけていた方が楽だとか、冷えないとかいうのであれば、つければいいと思いますし、無理につけることはないんじゃないかなと、私は個人的には思います。
でも、噂なので本当かどうか分かりませんが、特に冬は、お腹を守ろうとする本能で、不必要な脂肪がつくという話もあります。大事なところに毛が生えるのと同じで、そういうことがあってもおかしくないですよね。お腹に無駄にお肉のつく妊婦さんには、必須アイテムかもしれません(笑)。
何にしても、いいと思うものは取り入れ、嫌だと思うものは、無理にすることはないと思います。腹帯も科学的・医学的に、安産になるということが立証されているわけでもありませんし、迷信に近いかもしれません(というか、迷信そのもの?)。
つけたい、つけておいたほうがいいだろう、と思う時には気軽につける、そんな簡単なスタンスでもよいと思いますよ。快適マタニティライフ、過ごしましょうね!
【関連記事】