老後の不安、それは……


「年を取ると自分が生まれ育った食べ物に戻る」という話を聞いて、急に老後が不安になったという国際結婚の若奥様がいました。
結婚生活は順調で、夫婦仲はラブラブで、何もかもうまくいっていても、突然こんな不安に襲われてしまうほど、国際結婚カップルにとっての食べ物は、大きな問題なのです。

1つには、自分に対する不安があるのですよね。
たとえば、海外在住の方。今現在は毎日パン食でも大丈夫、ご飯は時々食べられればいい、特に日本食が好きというわけではないから…という人でも、自分が体験したことがない“老後”に「日本食に戻るんだよ~」と言われたら……。

ご飯に味噌汁、納豆と漬物。年を取るとこういう食事が恋しくなるのでしょうか……?
自分が元気で料理ができるうちはまだいいけれど、高齢者用の施設や病院に入ることになったら、そこで出される食事をいただくことになります。日本食が出てくる確率は、かなり低いでしょう。
カナダのバンクーバーには、日系コミュニティーの1施設として、高齢者用のケア住宅があり、そこでは日本食が提供されていますが、こういった例は世界ではまだ少数だと思います。

食事が主な楽しみになる年代になったときに、食べたい物が手軽に食べられない(入手できない)状況になるのは、かなりツライのではないか……。それが不安の要因なのですね。
冒頭の若い奥さんもそうでしょうし、実際、以前「私たちの国際結婚シリーズ」で取材させていただいたY子さんも、<完結編>のなかで同じことをおっしゃっていましたっけ。

また、日本に住んでいるパートナーへの心配もあります。
外国人の奥様あるいはご主人が、今は日本食とミックスした食卓で満足してくれていても、年を取って母国食しか受け付けなくなってしまったら……。食材自体は今より手に入りやすくなっているとは思いますが、自分で作れるか、作ってあげられるか、という問題が残ります。

“食の回帰”への心の準備


実際はどうなのでしょう?
私たちも、まだ老後の域に達していないのでよく分かりませんが、夫婦ではよく話題にしています。

夫は日本食が大好きで、家族とまったく同じものを、何でもよく食べますが、スイスに帰ったときは、その日からパタッと向こうの食事になります。見ていると、それは、彼が幼い頃からカナダに渡る日まで、ずーっと食べ続けていたものなんだなあということがよく分かります。

そして、聞いてみます。
「ねえ、年を取ったら、日本にいても、やっぱりこういう物を食べたくなるのかなあ?」
ま、答えは彼にも分からないのですけどね。
トロを食べ続けて死ねたら本望と思うか、やはりチーズとプロシュート(生ハム)を毎日食べたいと思うのか、どっちなんでしょう???

私は、年を取ったら、お互いの食べたい物を別々に並べる食卓でかまわないと思っています。経済的ではないかもしれませんが、食べる楽しみを失いたくないし、奪いたくもありません。
ただ、住んでいる場所によっては、入手困難なものもあるでしょう。
だから、どんな状況になっても困らないように、今からなるべくいろいろなものを食べ、その国や土地特有の食材にも慣れるようにし、料理の幅も広げるようにしています。

国際結婚した奥様たちも、ご家庭では奮闘なさっているようですよ。
次回はそんな実例をご紹介します。


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