このハート・ウォーミングな映画のもとになったのは、トゥーラを演じている主演女優ニア・ヴァルダロスの一人芝居でした。
ニアはカナダのウィニペグで生まれ育ったギリシャ系カナダ人。トロントで演劇を勉強し、その後、シカゴの名門劇団に所属します。この頃知り合った非ギリシャ系の夫と結婚に至るまでの体験が映画のストーリーのベースになっているのです。
やがて2人はロサンゼルスに移住し、実体験をもとにニア自身が書き上げた脚本で演じていたのが、一人芝居『My Big Fat Greek Wedding』でした。
クチコミで評判が評判を呼び、舞台は大ヒット。それを観にきたのが、トム・ハンクス夫人のリタ・ウィルソン。自身もギリシャ系のリタはいたく感激し、夫に映画化を強くすすめたのです。
そして、ニアはハンクスから直に電話をもらい、映画化を依頼されることに……。
それから、脚本を映画用に書き直し、自ら主演することになって、『マイ・ビッグ・ファット・ウェディング』は完成しました。
実は、ハリウッドではまったく無名で41歳のニアを主役にもってくるということには、かなり反対意見もあったようですが、最後まで彼女を強く推したのはトム・ハンクス夫妻だったそうです。
それは正解でしたね。やはり彼女ではないと体現できなかったものがあるのではないでしょうか。
それに有名女優ではなかったことが、かえって観客がこのストーリーを身近に感じ共鳴できたことの一因でもあるような気がします。
それにしてもニアは41歳とは思えないくらい若々しくチャーミングですよね。
映画の大ヒットもあり、『My Big Fat Greek Wedding』は数々の映画賞にもノミネートされました。ゴールデン・グローブ賞のミュージカル・コメディー部門では、作品賞、主演女優賞の2部門に、そしてアカデミー賞では脚本賞にノミネート。アカデミーの授賞式にプレゼンターとしても登場したニアは、自分で幸せのチャンスをつかんだ映画の中のトゥーラのように、いきいきと輝いていました。
●自分のことのように共感できる映画
この映画で特に観ていただきたいポイントは、ニアとイアンが、いかに双方の家族の文化を受け入れ、いかに歩み寄って行ったか、です。
まあ、ちょっとギリシャ色のほうが濃い感じもしますが、それでも2人が「幸せになりたい」とお互いに向き合い、さらにその後ろにいる家族たちにも目を向けて、話し合いながらより強く心を通じ合わせていく様子は、やはり感動的です。
また、みなさんのなかで、ご両親に結婚を反対されている方がいたら、ニアの家族の様子はとても参考になるのではないでしょうか?
頑固なお父さんは、日本の父親像とどこか通じるものがあり、とても他人事とは思えません。というより、「ああ、ギリシャのお父さんもこうなんだ」という感覚の方が近いかも。
そんな父親を、おどしたりなだめたりしながら説得してくれるお母さん。最後に娘の味方になってくれるのは、やはり母親なのでしょうかね。
そして、なにかとバックアップしてくれる叔母さんや、自立の道を進んだ姉を尊敬している弟。彼らは、イアンとその両親がポルトカロス家の雰囲気になじんでくれるように、さりげなく手助けしてくれます。家族や親戚のなかにこういう存在がいてくれることも重要ですよね。
忘れてはいけない大事なことは、家族のみんながニアの幸せを願っているということです。「ギリシャ系じゃないとダメだ!」というお父さんも、本当は娘の幸せを心から望んでいるのです。
ただ、自分が昔から言い続けてきたことに反してしまうというか……、その辺なんですよね、きっと。自ら信念を曲げることはできないぞ、みたいな、自分のなかのジレンマ。だからつい反対のポーズをとってしまう……。イアンに会ったお父さんは、おそらく「いい人みたいだ」と感じたと思うのですが……。
結婚を反対されている方は、ご自分の家族と重ね合わせてご覧になってもいいかもしれません。
映画のプロモーションで来日したニアも、記者会見でこう語っています。
「面白いのは、この映画を観た人はギリシャの話とは思わないことで、みんな自分たちの話だと思う、それはすごいことだと思うわ」
私たちは、観終わった後、「自分たちがあの状況だったらどうしただろうね?」などと話し合ったりしました。そういう会話をしたくなる映画なのです。
国際結婚や異文化間結婚、そして家族というものを、もう一度考えさせてくれるきっかけになる映画です。
ぜひ、お2人でご覧になってくださいね。
『マイ・ビッグ・ファット・ウェディング』公式ウェブサイト:
http://www.mybigfatwedding.jp/index.html