生産者に人気があるとは言えないそば
ソバは、とても収穫の効率が悪い作物なのである。コムギやイネなど、主食を担う穀物に較べると、反当たりの収穫は、重量比で何分の一かになってしまう。
もとより取引単価がさほど高くないソバである。その上生産効率が悪いとくれば、積極的に取り組む生産者がさほど増えないのも理解できる。
そんなわけで、ソバはメインとなる作物の「裏作」として、輪作体系の裏側に位置づけられることが多い。
秋ソバの場合、関東では8月中~下旬に種を播いて、10月下旬~11月上旬に刈り取るというスケジュールとなるので、これは11月下旬に種を播いて、翌年の6月に収穫するコムギの裏作としてまさにうってつけではある。が、しかし、モノゴトはそう単純にはいかない。
ソバの生命力があだになる落粒発芽
ソバはとても生命力が強い作物だ。例えば、舗装道路のひび割れたスキマに種が入り込むと、その悪条件の中でも発芽する。地下室などにあっても、温度や湿度などの発芽条件が整うと、長大なスプラウトとなって、白っぽい茎をどこまでも伸ばしていく。確かに、救荒作物として考えると、こうした生命力は頼りになる。でも、しかし、なのである。
近年ソバアレルギーが大きな問題となってきた。ソバに反応して激越な症状を呈するアレルギーがあるのである。そのため、コムギや他の作物の収穫時に、一粒たりともソバが混入することは許されないのだ。
しかしながら、コムギの刈りどきと、落粒発芽したソバが実をつける時期が、極めて近いタイミングになりがちなことから、コムギの収穫時にはソバの混入に対して神経をすり減らしながら監視することになる。
関東の場合、5月中旬から下旬にかけて、コムギ畑の中で発芽したソバをチェックする時期となる。圃場(畑)の周囲は三角ホー等で簡単に作業ができるが、コムギ畑の中で、どういう理由かでコムギが薄く播かれてしまっている部分があったりすると、ソバが勝って実をつけていたりする可能性が高い。場合によっては圃場の奧まで分け入って、一粒の蕎麦の実もないことを入念に確認しなくてはならいのだ。