力強さと繊細さを兼ね備えるメイン料理

・魚料理:泉州産穴子のマトロート フォアグラと仏産きのこ添え

こちらのスペシャリテのひとつです。マトロートは魚をワインで煮込んだもので、ウナギを使ったものが有名ですが、こちらではアナゴを使用。濃厚なフォアグラと合わせるには、脂が乗り乗りのウナギよりも、さっぱりとして上品なアナゴの方が適しているということでしょう。ビストロといえども、ただ力強さだけで押してこないのが、「レストラン料理をビストロスタイルで」の「ル・ピシェ」スタイル。

一口目。日本人にとってはやはり穴子は照り焼きを思い出すコク。ニ口目…の直前、ソースの赤ワインの深みがしっかりと感じられ、そう、これがフランス料理であることを脳に刻まれます。穴子から出た旨み、フォアグラから出たバターは添えられたキノコに吸収され、一滴たりとも無駄にしません。その力強さと繊細さは、立派なメイン料理たりえています。

・肉料理:タスマニア産仔羊肉のハーブロースト フルムダンヴェールのソース

羊のローストが出されると、意地悪な僕はまず火の入り具合を見てしまいます。表層3mmの焼き目の中がどれだけ均一に火入れされているか。その点、これは完璧といえます。30分以上かけてじっくりとローストされ、その旨みを存分に増幅された肉汁は申し分なし。

フルムダンヴェールチーズを使ったソースは、そのマイルドさが羊肉に対してはあくまで邪魔にならない程度にミルキーさを与え、そのスパイシーさが添えられたニュージーランド産の太アスパラにはアクセントとして生きてきます。使われているハーブは、シェフの奥さんのご実家で栽培されているもの。皿の中でそれぞれが良い関係性を築き、全体のおいしさを構成しています。

・デザート:焼き立てりんごのパイとバニラのアイス

こちらのシェフはパティシエもされていたことがあり、デザートメニューはビストロにも関わらず6種類ほどから選べます。今回はスペシャリテのこちら。ドラマにもなった漫画「西洋骨董洋菓子店」で、パティシエの実力を見るにはクロワッサン・アップルパイ・ショコラ・エクレールが良いと言うシーンがありますが、このアップルパイを食べれば、あとの二つもメニューに入れて欲しい…と思わせてくれるレベルの高さです。

サクサクのパイ生地を噛んだ瞬間、多層になったその間に含まれる空気が口から鼻へ抜けます。それはりんごの風味をたっぷりと持った香り。ふわっと、あくまで優しく包み込んでくるような香りは、食べ物にとっていかに香りが大事かを教えてくれます。キャラメルソースに、濃厚な自家製バニラアイスと、オーソドックスな組み立てだからこそ、こちらのスイーツの実力をまじまじと突きつけられます。

・ハーブティー
ハーブティー
さすがは南仏スタイルのこちら、アラカルトのハーブティーも数種類用意されています。コースに付いてくるハーブティーはローズマリーやブドウの葉、カシスの葉などをブレンドしており、シェフとお話をしながら飲んでいたのですが、ほわっと来る香りが心地よすぎて、一瞬魂がどこかへ行ってしまいそうなほどでした。

料理はすみずみまで行き届いた印象があり、力強い素材に優しい味付けをすることでおいしさを高めています。それは同時に素朴さと繊細さであり、プロヴァンスで僕が感じた南仏料理のエッセンス。スタッフのホスピタリティにも満たされたこの店は、ビストロと名乗りながらも、しっかり「レストラン」の体をなしています。

お店の外観
<店データ>
■「ビストロ ル・ピシェ
所在地:大阪府大阪市西区京町堀1丁目11-3 園部ビル1F
TEL: 06-6444-1170
定休日:日曜日
営業時間:昼 11:30~14:30(ラストオーダー)
      夜 18:00~21:30(ラストオーダー)
交通・アクセス:地下鉄四つ橋線 肥後橋駅徒歩3分
地図:Yahoo!地図情報

HP:ビストロ ル・ピシェ
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