この日いただいたのは伊万里牛。
登記書には仔牛の鼻紋(びもん)が押され、
父牛・母牛の血統が記されていました。
肉の“つらがまえ”で味を見分ける
焼肉店の味を決定づける究極の要因は、店主が優れた目利きであるかどうか。A5ランクの中でもとりわけ上等な肉、極上の部位を見抜いて買いつける能力と、その肉を巧みに熟成させ、食べ頃を的確に判断できる能力が味を左右します。
「100本の枝肉が並んでいたら、そのうち本当に良質の肉は1割もない。それを探すのが大変なんです」
カルビ亭店主・田中さんは、肉の外見=“つらがまえ”から判断し、牛の発育状態、病気経験の有無まで見抜いてしまう眼力の持ち主。やはり、病気せず健康に育った牛がおいしいのですって。
30年前の創業当時は枝肉をほんの少しだけ薄く削いでその場で味見することができ、肉の外見と味の関係を自分の体に鮮明に記憶させることができたのだそう。
当時の九州の焼肉店事情といえば新鮮な内臓卸業者もお店の経営者も在日韓国の人がほとんどで、新規参入した若い日本人が内臓などを仕入れに行っても、上等なものは入手不可能だったといいます。
「最初は苦労しました。何軒もの仕入れ先を回り、ここで数百グラム、あそこで数百グラムと少しずつ買っていくしかなかったんです」
もとから人との信頼関係を大切にしてきた田中さん。開業1年を過ぎた頃、業者の一人からあつい信頼を得て、優先的に良質の食材を卸してもらえるようになりました
「お客さまに感謝するのは当然ですが、良いものを入れてくれる仕入れ先の人々に感謝の心を忘れないことがお店の基本ですね」