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エスプレッソ焙煎・ノリヨシミローステリア(2ページ目)

下北沢のBEAE POND espressoのコーヒー豆は、気鋭の焙煎士・吉見紀昭さんが手がけています。哲学もファッションも、今までに出会った焙煎士とは異なる個性的な彼に、真剣で熱のこもったお話をうかがいました。

川口 葉子

執筆者:川口 葉子

カフェガイド

わずか30秒に賭けるエスプレッソの面白さ

ネルドリップでコーヒーを抽出した経験も、バリスタとしてエスプレッソを提供した経験もある吉見さんですが、焙煎の対象としてエスプレッソに特化した理由は「30秒に全てを賭ける面白さ」だといいます。

「たとえばネルドリップには10分間かかるとしましょう。エスプレッソは同じ仕事を30秒でこなす瞬間勝負。その30秒に全力を集中するわけですが、集中しているときこそ、その人の人間性がまるごと出るんです」

そんなバリスタのために豆を焙煎すること。最高のエスプレッソを実現するためにバリスタと入念に話し合うこと。それらの作業のすべてが自分にとっては面白いのだと吉見さんは語ります。

「私は未熟者なので、好きなことしかできないんですね。そして、好きなことであれば全力をもってできる。だから大好きなエスプレッソ専門に焙煎しています」

ノリヨシミ・ローステリアの写真

焙煎士は豆を完成させてはいけない

吉見さんが焙煎するときに最も意識するのはバランス。
「重要度のバランスは、生豆のクオリティが25%、焙煎が25%。もう25%はバリスタで、残りの25%は飲み手の好みや体調、気分」

最後の25%は焙煎士がコントロールすることはできませんから、バリスタとお客さまとの共同作業になります。
「バリスタがいかにお客さまを楽しませるか。25%はそこで引き上がればいい。だから、焙煎の段階では絶対に豆を完成させません。完成させようという意識で焙煎すると、バリスタの入る余地がなくなってしまうのです」

それゆえに、個人のお客さまに豆をお売りすることはできません、と吉見さん。
「私の豆は完成していないんです。BEAR POND espressoでは私の焙煎した豆を売っていますが、それはバリスタの田中さんがきちんとお客さまに伝えることができるから。田中さんが考える豆の楽しみ方、取り扱い方をお客さまに伝えたられた時点で、初めて完成するのです」

吉見さんが焙煎した段階では、まだ豆がまっさら状態で色がついてないのだそう。その豆がBEAR PONDのカウンターに置かれることによって、BEAD PONDの味になります。私はそれが楽しいんです、と吉見さん。

だからこそ、実力のあるバリスタと焙煎士の関係は、BEAD PONDの田中さんいわく「ピッチャーとキャッチャー」。名バッテリーとして息のぴったり合った仕事をすることが、完璧な一杯を生み出します。

次のページでは、吉見さんのライフ・ヒストリーをお伝えしましょう。会計士である父親の事務所に勤務していた吉見さんは、父の反対を押し切ってコーヒーの仕事へと転身し、ポール・バセットの教えに衝撃を受けることになります。

▼父の会計事務所を継ぐつもりが…

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