最高の一杯をめざして
お店の入口を入ると、マスタード色のソファが迎えてくれます。まず正面に、間庭さんがローストするスペシャルティコーヒー各種の量り売りカウンター。そして、コーヒーと同様に評判の高いスイーツのショーケース。右手にはコーヒーポットやドリッパーなどコーヒー雑貨の販売スペースが設けられ、その奥に、銀色の焙煎器が輝いていました。「東京で過ごした学生時代から、ずっと喫茶店が好きで、コーヒーがおいしいと評判のさまざまなお店に足を運んでいたんです。銀座のランブル、バッハ……そんな中で出会ったのが珈琲工房ホリグチでした」
当時のコーヒー焙煎はまだ、日本のコーヒー焙煎と喫茶店の歴史を作ってきた偉大なマスターたちによる、職人芸と神わざの世界。 そこに理論を持ち込み体系化しようと試みたのが堀口氏と言われています。
それでも、日々の微妙な条件の変化をこまかく読み取りながら、イメージ通りの味に、安定して仕上げていくのは、最終的には「数値化できない」作業のよう。
お店のコーヒー観を表現するシティローストの「Enbi(艶美)ブレンド」、フレンチローストの「Tobi-iro(鳶色)ブレンド」を、どんなに豆の条件が日々違っていようと、味の変化を一定の幅の中におさめる技術こそが、間庭さんが磨いてきた腕の見せどころです。
おいしいコーヒーを、家庭でも
間庭さんはホリグチでの仕事を通して学んだコーヒーへの取り組みについて、こんなふうに話してくれました。「長いあいだ、コーヒーは“嗜好品”に分類され、あいまいで主観的な世界の中に置かれてきましたが、コーヒーは食料品であり、農作物です。焙煎はもとより、コーヒーの品種、栽培の現場、商社の売り方、名前のつけ方、味の評価まで、ひとつひとつ客観的に『なぜ?』と問い直していくと、まだまだ不明なことばかりです」
間庭さんをはじめ、真っ当でおいしいコーヒーを求める人々のシンプルな「なぜ?」が、世界にわずかずつでも変化をもたらし、よりおいしい一杯へと実るように、コーヒー好きの一人として期待しています。
丹精こめて焙煎したコーヒー豆を、家庭でもおいしく味わっていただきたいと、tonbi coffeeではコーノ式のドリッパーを用いたハンドドリップのセミナーを開催し人気を博しています。
間庭さんがドリップで大切にしているのは、いかに豊かなコクをひきだすかか。
「たとえば、最初に30秒蒸らすとよく言われますが、大切なのは数字ではなくて、コーヒーの粉の状態の変化を目と鼻で確認すること。セミナーではそれを実際に体験していただきます」
本を10冊読むよりも、身体でコツを覚えやすい体験セミナー、お近くのかたはぜひ参加してみてくださいね。間庭さんの熱のこもったお話が聞けると思います。