お店の心意気と、それを理解するお客さまの幸福な関係
「30代ひとり暮らし、ものを生みだす仕事をしている人、無邪気さを忘れず、自己責任において生き方を楽しむ大人たち」を見すえたカフェづくり。
オーナーによればアヂトは、生きにくいこの社会の中で信念をつらぬこうとする大人たちが、鬱陶しいことがらは胸の内に閉じこめて、自分で元気を作る場所。(そう、元気は誰かがくれるのを待っているものではなくて、自分の手でそっとすくいあげるものですよね) 常連のお客さまたちは、思い描いた通りの人々なのだそう。
そんなアヂトの自由でゆるやかな使い心地の良さがもっともよく表れているのは、最上階の3階かもしれません。天井まで贅沢にのびた窓から見える大きな空。文庫本がぎっしり並ぶ、長いL字型の木のカウンター。1階にいるスタッフを呼びたいときは、壁にとりつけられたインターホンを使います。
このフロアに並ぶやわらかなイエローの椅子もすべてIDEEによるオリジナルで、新しいのに何年も前からそこに置かれていたような落ちつきと、ゆったりした座り心地を重視してデザインされています。ことにカウンターに置かれた椅子は、ふかぶかと腰を沈めれば眠りに誘われていくほど気持ちがいいようで、
「カウンターに座って、お仕事をなさっていたかと思うとひと眠り、目をさましてまたお仕事、を繰り返すお客さまもいらっしゃいます(笑)」
と、店長のゆかさん。
お店の取材にあたって、事前にゆかさんと電話やメールで何度かやりとりをさせていただいたのですが、その礼儀正しさとお仕事の的確さ、そしてふわりとあたたかい気持ちにさせてくれる小さなユーモアには感心するばかり。お店での接客の姿勢もその通りでした。
「オーナーには、お客さまに必要以上に話しかけず、ほどよい距離感を保ってお客さまに自由にお過ごしいただけるようにと言われています。また、常連のお客さまでも初めてのお客さまでも同じように接するように、とも」