カフェを長く続ける秘訣
「ムースを作るのが好きです。ふわーっとした生地をかきまぜるとき、ボウルに木ベラがカツカツと当たる音が好きなんですね」美佳さんはお菓子作りの楽しさを、いきいきとした言葉で話してくれました。なるほど、お菓子を作っているキッチンには、香ばしい匂いだけではなくて、たくさんの「おいしい音」が響いているのですね。
この日いただいた定番メニュー「レンズ豆のモンブラン」も絶品でした。また、10~11月だけ登場する「和栗のモンブラン」は、ご両親が世話をしている畑のとなりの栗畑から届いた和栗で作るもの。栗をいったん茹でて皮むきし、裏ごしして…という作業があまりにも大変なので、一度作ったらおしまいにしようと思ったのだけれど、お客さまに人気を博して栗の季節の定番メニューになったのだそう。
お菓子を作るときに手を抜いてしまうと自分自身の「作る喜び」がなくなってしまうからと、手間のかかる作業を続けてきた美佳さん。何年にもわたってその仕事を支えてくれたのは、お客さまの反応だったといいます。
「お客さまから元気をいただいています。一生懸命やったことに対して、ちゃんと反応が返ってくるのです。お菓子やお料理ばかりではなく、季節感を楽しみたくて店内に季節の雑貨を飾ったりすると、それをお客さまが喜んでくださるのも嬉しいですね。自分が楽しんでしたことが、喜んでいただけるのは幸せなことですね」
お客さまの6割はひとりで訪れる女性客ですが、中にはひとりで紅茶を楽しみにやってくる男性客も。オーナー夫妻が旅行に出るときには、ご近所のおばあちゃんが植木に水をあげてくれたり、年末年始に挨拶に訪れるお客さまがいたりと、三軒茶屋の人々の生活にしっかり溶け込んで愛されているカフェなのです。