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旅のカフェ・尾道 梟の館(ふくろうのやかた)(3ページ目)

映画の舞台としても知られる美しい町、尾道。海を見下ろす坂道には、満月の夜だけ開かれる一軒家のワインバーがありました。昼間はカフェとして扉を開け、旅人を迎え入れてくれます。

川口 葉子

執筆者:川口 葉子

カフェガイド



フクロウは智慧と幸運の象徴

園山春二氏のご本業は絵師。各地の寺の壁画や天井画を描くほか、尾道に幾つもの小さな美術館を開いたり、崩れかけた寺の本堂をギャラリーとして復興したりと、多彩な活動を続けています。
外交官の父親を持ち、フランス生まれのフランス育ちである園山氏に、フクロウの収集を始めたきっかけについて訊ねてみました。

「子ども時代は寄宿舎に入っていたのですが、休暇で家に帰るたびに、なぜか僕の部屋にフクロウの置物が増えていました。母親にたずねると『これはおまえが生まれた年に買ったフクロウ』『これは入学の年に買ったフクロウ』と。ヨーロッパではフクロウは智慧や幸運の象徴。屋根裏にフクロウが棲みついた家は繁栄すると言われています」

園山氏が絵筆をとった時、最初のモティーフになったのがフクロウでした。梟の館の壁にも、園山氏の筆によるフクロウのタペストリーが掛けられています。

梟の館のはじまり

かつては世界各地を旅していた園山氏。最初の「梟の館」は鎌倉の一軒家でした。日頃会えない友人たちと月に一度、満月の日に集合しようと約束を交わし、そのための一軒家を用意。家の鍵も友人たちに渡し、園山氏の不在中は友人たちが自由に寝泊りしていたとか。周囲の人々を喜ばせたいという園山氏の基本的なスピリットは、この当時からすでに発揮されていたようです。

尾道との出会いは9年前。友人が寺にギャラリーを造るにあたり、コケラ落としを依頼された園山氏は1ヶ月ほど尾道に逗留。散歩中にこの古い一軒家と出会いました。当時は人が住まなくなって何年もの歳月が経過した、廃屋同然の家。

「あの家を借りたい。そう思っていたら偶然にも持ち主が友人の知り合いであることがわかり、すぐに借りることができました」

放置しておけば朽ちてしまう木造家屋を自らの手で修復していくと同時に、園山氏は尾道の町そのものをいっそう魅力的にするための尽力も惜しみませんでした。
古い商家をリノベーションした「招き猫美術館」など、散歩中に気軽に楽しめる小さな美術館をプロデュースし、町のそこかしこに888匹(現在では千匹以上)の「福石猫」を設置して人気を呼ぶなど、訪れた人々を楽しませるアイディアは尽きず、尾道に新たな魅力を与えています。草むらや屋根の上に隠れた石の猫を探しながら坂道を歩く楽しみは、この迷路を何倍も魅力的にしているのです。
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