エスプレッソはすぐに飲むのが楽しむコツ

「おいしいカプチーノは、ベースとなるエスプレッソの味が、ミルクの甘さに負けていません。新鮮なコーヒーの味がしっかり感じられるんです」

今、裕二さんがこだわっているのが、力強さの中にレモンのさわやかな酸味を秘めたエスプレッソ。ひとくち飲むと、目のさめるような鮮烈な美味が口中にひろがりました。豊かな香り、柑橘系の魅力的な酸味、パンチの効いたボディ、それでいてすっきりと冴え渡る切れ味。
裕二さんがその1杯の中で表現しようとしたものの輪郭が、くっきりと伝わってくる素晴らしい味わいでした。

「90℃のお湯を与えると、コーヒー豆の中の油分が溶け出しますが、この油の中に含まれる成分こそがおいしさの素なんです。 9気圧の蒸気をお湯にかけると、コーヒーから油分が理想的な状態で出てきますが、おいしく抽出されているかどうかは、クレマと呼ばれる泡からも判断できます」

赤茶色できめの細かいクレマがエスプレッソの表面をおおっているなら、そのエスプレッソはきっとおいしいはず。クレマに豊かなアロマが含まれているのです。ところが、このクレマは時間とともに消えてしまうもの。

「ですから、私たちはエスプレッソを抽出したら急いでお客さまにお出ししています。お客さまにもぜひ、クレマが消えないうちに楽しんでいただきたいですね」


兄の個性、自分の個性

兄の洋之さんが抽出するエスプレッソも、同じ系統の味わいなのでしょうか?

「ところが、父も兄もそれぞれに好みが違うので、3人とも自分の味を出しているんですよ。兄はエスプレッソのあと味、つまりアフターフレーバーを重視しますし、僕は最初に匂いをかいだときと飲んだときの印象が同じで、最初からしっかりしたボディが感じられるエスプレッソが好きなんです」

当面の目標は、日本バリスタチャンピオンシップで優勝することだという裕二さん。そのためには、お兄さんの洋之さんに勝たねばなりません。 兄弟の間にライバル意識のようなものはあるのでしょうか?

「いや、兄が優勝したときは、僕はいつもサポート役に回っているんです。今回の世界大会でもシアトルに同行してずっとサポートしていました。 もしも僕が優勝することがあったら、兄は快くサポートしてくれると思います」

父の美己さんや兄の洋之さんとの間でコーヒーに関する情報をやりとりはするけれど、相手の個性を尊重し、味についてはあえて言わない。それが一家の暗黙の了解のようでした。