島根には、全国のコーヒー好きに名を知られる3軒のカフェがあります。その1軒のオーナー、門脇洋之さんは、2005年4月16日から18日にかけてシアトルで行われたワールドバリスタチャンピオンシップにおいて、優勝のデンマークに次いでみごと準優勝の栄誉に輝きました。
彼の焙煎技術は父・門脇美己さんから受けついだもの。そしてその技術と情熱は弟・門脇裕二さんにも等しく受けつがれています。門脇家の三者それぞれの個性が光る3つのカフェと、コーヒーへの探究心に満ちた3人のお話をお届けします。
バリスタの名門ファミリー
松江から電車で東へ20分、人口3万人の小都市・安来には、世界に名を馳せる名門バリスタ一族がカフェを構えています。父・門脇美己さんの「サルビア珈琲」は1967にオープンした自家焙煎珈琲店。優しく香り高く、透明感のある一杯に熟練の職人技が光ります。長男・門脇洋之さんは「CAFFE ROSSO」のオーナー。美己さんから焙煎技術と最高の一杯への情熱を受けつぎ、2001年から連続して日本バリスタチャンピオンシップで優勝、さらに2005年にはシアトルで行われたワールドバリスタチャンピオンシップでもみごと準優勝を果たしました。
次男・門脇裕二さんは松江の「CAFFE VITA」のオーナー。2005年日本バリスタチャンピオンシップに入賞。2003年には兄の洋之さんに次いで2位に輝いています。
3つのカフェ、3つの個性
おいしいコーヒーを求める人々の間で、3人の名前はつとに知られるところ。門脇兄弟に憧れて自らもバリスタを目指す人々が全国から島根の小さな都市を訪れ、それぞれのカフェで香り豊かな時間を過ごしています。新緑の季節、東京から飛行機で出雲空港に飛んだ私は、まず松江のCAFFE VITAを訪れ、続いて安来のサルビア珈琲とCAFFE ROSSOで極上のエスプレッソやコーヒーを楽しみました。
その味と香りは、3人とも共通の志向を持つかと思いきや、各人各様まったく異なる味わい! 理想とする味のイメージが3人とも違うのですね。一杯のカップの中にそれぞれの際立った個性がひろがり、たいへん興味深く思われました。
この特集では、門脇家の3人におうかがいしたコーヒーとエスプレッソのお話を、訪問した順にお届けします。まずはCAFFE VITAのオーナー、次男・門脇裕二さんのお話をお楽しみください。
最初からガツンとくる力強いエスプレッソ……CAFFE VITA 門脇裕二さん