フレンチ/東京のレストラン

ボンシュマン(祐天寺)(2ページ目)

祐天寺と学芸大学のちょうど間になるのだろうか、忽然と現れたボンシュマン。ご近所さんのレストランにとどめておくのはもったいないほどのフレンチだ。

嶋 啓祐

執筆者:嶋 啓祐

フレンチガイド

「鮎のテリーヌ ジン風味」は旬の鮎を丸ごと網焼き(グリエ)して、骨もすべて裏ごししてテリーヌにしたもの。トマトなど夏野菜が添えられている。

鮎の上品な味わいが広がる季節感溢れる意欲的な作品だが、味わいが単調で後半にはくどさが残るせいか、途中で食べ飽きてしまうのが何とも残念。一口サイズのアミューズなら感動はひとしおか。
という訳で少し残してしまったそのあとはスープを選ぶ。


「ガルビュール風のポタージュ、鰯のポワレ添え」スペイン国境に近いランド地方の郷土料理の一つで、フランス南西部の素朴な風景が皿の奥に見えるようだ。やさしい香りの中にフランス郷土料理の奥の深さが漂う。

後でシェフに申し上げたのだが、これはドンブリで欲しいと思ったほど旨い。多くの夏野菜やベーコンなどが程よく調和したスープは夏でも冬でも体に優しい。鰯のポワレも味わいをぎゅっと締めるものだ。一気に平らげたが、食べるスピードも忘れるほど。私はこういった「調和」を感じる料理が大好きだ。皿の中にはフランスの田舎町が佇んでいる。


友人が選んだのは「フォアグラのベニエ、ポルト酒ソース」
食通の皆様はご存知だと思うが、フォアグラは金曜日が旨い。木曜夜にエアーで日本に到着し、翌日にレストランに搬入される。フレッシュさがとても重要な食材だ。味わい深いフォアグラを薄い皮で包んでカリッと揚げたもの。その深い味わいは、ストレス溜まる仕事を抱える疲れた友人の表情を、ゆるやかにやさしさ溢れる表情に変えていく。

メインに選んだのは前日に入荷したばかりの「ブレス産子鳩のロティ、内臓のソース香草風味。」これも前日に届いたもの。一見こってりとしたイメージに見えるかもしれないが、さすがブレス産の小鳩。じわっとくる食感に見た目ほど濃くない、さらりとした、でも後味を後に引く内臓ソース。この「調和」が今夜のクライマックスの瞬間か。
この時期でも忘れられない一皿だが、ジビエの季節にはもっともっと期待したい。

            

花澤シェフと食後に久しぶりに話をしたが、最初からわかっていたとのこと。なんだ、しらっと来たのだが、ばれていた。最初に会った時の印象とは大きく変わってはいたが、穏やかな表情の中に、まだまだ今の料理には満足していない印象を受けた。

これから少しずつ、少しずつ成長していくに違いない。

ここは決して街場のビストロではない。ちょっとお洒落して出かける近所のレストランか。

ちなみにこの日のお値段はこの通り。
5,600円のコース2つ(フォアグラ+700円、小鳩のロティ+1000円)
グラスワイン白2つ
ブルゴーニュワイン5,800円
合計で23,000円

小鳩のロティは入荷の予定がはっきりしなかったためにメニューには載っていない。予約時に問い合わせてみることをお勧めする。

            

ボンシュマン
東京都目黒区五本木2-40-5 Beat101
TEL 03(3791)3900
営業時間 11:30~14:00(L・O) 18:00~21:30(L・O) 水休
席数 22席 6名までの個室あり
オーナーシェフ 花澤 龍(芸名みたいな名前ですね)
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※メニューや料金などのデータは、取材時または記事公開時点での内容です。

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