カードゲーム・ボードゲーム/カード&ボードゲーム関連情報

それはシングルモルトにも似て

ゲームもお酒も、精緻なバランスの上にそれが成り立っています。そしてそれが完成するまでの膨大な時間に気がつくことができれば、より深くその味わいを堪能することができることでしょう。

執筆者:双六屋 カゲゾウ

より深くゲームを味わうために

私見ですが、よくできたゲームはシングルモルトに似ているような気がします。ルールもコンポーネントも極限までそぎ落とされ、間然とするところがない。

具体例を挙げると、ボードゲームの神様、アレックス・ランドルフの『ガイスター 』や『チャオチャオ』『ヴェニスコネクション』など、プレイ時間20分くらいの小作品は、特にこの傾向が強い。

某ウィスキーメーカーのコピーをちょっともじらせてもらえば、その完成度において「何も足せない、何も引けない」という感じでしょうか。

素材の持ち味をストレートに味わうためにも、生のままでいくのがいいのはいうまでもありません。(もっとも、ウィスキー通はストレートではなく、ごく僅かに加水するそうなので、この場合加水にあたるのはプレイヤーということで)

まあ、ほとんどの方はルール通りに遊んでいると思いますので、「コイツは何を当たり前のことを」と思われるかもしれませんが、例えばこんなことがありました。

余計なことをしてみると分かる絶妙なバランス

チャオチャオ
どんなゲームにも作者の意図がある。それを読み解けた時、ゲームの新たな魅力が……
あるときプレイヤーが双六屋を含めて、2人しかおらず、でもどうしてもカタン(3~4人用)を遊びたいということになりました。

そこでネットで見つけたバリアント集の中に「2人用カタン」があったので、コレで遊んでみたのですが・・・・・・ 

ゲームとして遊べなくはありませんが、オリジナルの遊び方と比べると、やはりどうしても喰い足りないというか、味わいが薄いわけです。

またあるイベントで『ピラニアペドロ』というゲームを回していたとこのことです。

このゲームは河の中洲に取り残された、酔っ払いのペドロを、カードを使って操るゲームです。ペドロが落水したり、ピラニアに噛まれたりすると1アウト。2アウトになってしまったプレイヤーが出た瞬間にゲームが終わるという「負け決め」ゲームなのです。


その時は、ゲームの展開が早く割と早く勝負が決まってしまいました。そのためでしょうか、ある参加プレイヤーから「3アウトに変更しよう」と声がでました。

他のプレイヤーもそれに同意し、無理やりゲームを続行してみたのですが、途端にゲームが冗長となり、愉しさの密度もぐっと落ちました。

つまり、我々プレイヤーがちょっとルールに手を加えようとすると、いきなりゲームバランスが崩れてしまうのを経験したことがあるのです。

あの巨匠がゲームを世に出す前にしていること→
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